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コンコン。
窓を叩く音に慌てて、開けた。さっと冷たい雪混じりの風が入ってくる。
中年の男性だった。
「気分は大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「いやあ、マフラーまわりを除雪してたら、この車も埋まりかけてて、危ないなと思って」
「あ、すみません。ありがとうございます」
慌てて外に出て、マフラーまわりの雪をどけた。
雪は少し小降りになったような気もするが、溶けないため、積もった雪は深くなっていた。
自分の車の後ろもずっと車が続き、ランプが一直線に光っている。
街を見ると、真っ白の雪でおおわれ、きれいに見えた。
早く抜け出せないか、そればかり考えていた街。
転校生はよそ者だ。
父の仕事のせいで、何度も転校して、わかっていた。だから、うまくやるコツは身についていると思っていた。
それが、この都会でもなく、田舎でもない中途半端な街では通用しなかった。
きっかけは英語の発音だった。
「日本人じゃないな」
太田の一言に追従するように笑いが起きた時、クラスでの扱いは決まってしまった。
直接、何かされるよりも無視されることがつらかった。ただ、父の次の転勤が早く決まることを祈る毎日だった。
幸い、一年半で転校できたが、二度と来るつもりはなかった。
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