1:入学

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1:入学

 超能力。それは、人類に与えられた、いわば“個性”。炎を操ったり、空を飛んだり、手足を一メートル以上伸ばしたり……未だに科学的に解明されていない、各々の持つ“特殊な力”のことである。  この世界は少し前まで学力でも容姿でもなく──自分の持っている能力の優秀さで人間としての優劣も決めていた。能力があるならまだいい。  能力を持っていないいわゆる『無能力者』はさらに理不尽な扱いを受けていたのだ。 現代では有難いことに能力関係なく人間平等であるという考えが定着しつつあるが、無能力者の肩身は未だに狭い。就職や受験において、明らかに不利。  ──そんな世の中だからこそ、私は今日この日、無事に高校生になれたことを感謝して生きていこうと思う。  そう、今日からこの私、桜茉莉(さくら まつり)は私立青空学園の一年生。  無能力者である私が入学できる学校なんてないと思っていたのに──青空学園は能力の有無関係なく私を迎えてくれた。しかも希望者には校舎内の寮に住ませてくれる好条件! 故に、私にとってこの学校は本当に神様のような存在なのである。おかげで私は念願のセーラー服を着て、今から女子寮を出る。  涼しい朝の冷気を浴びながら、私は女子寮の門の前でもじもじしながら立っている青年に話しかけた。 「(はじめ)、お待たせ」 「おっせーよ! お前を待ってる間、女子から不審な目で見られたんだからな!」  そうぶっきらぼうに文句を言う彼は私の幼馴染の小鳥遊朔(たかなし はじめ)。人相も口調も悪く、小学校でも中学校でも周囲に誤解されがちな青年だ。だが、本当は不器用なだけで、世界一やさしい男の子であることを私は知っている。そりゃあ、もう十六年も兄妹のように過ごしてきた仲だからね。 「とにかく東棟行くぞ。クラスは……多分一緒だろ」 「いやいや、まだ分かんないでしょ」  ……とは言ったものの、多分彼と私は同じクラスになることだろう。だってこの十六年、ずっと同じクラスだったのだから。彼とはもはや呪いに近い「腐れ縁」とやらで強く結ばれていることを確信せざるを得ないのである。
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