4. 秘密の話

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4. 秘密の話

バスに戻ると、皆に沢山心配された。 「皆、本当にごめんなさい。迷惑かけちゃって。」 と、姫和が頭を下げた。俺も一緒になって頭を下げた。 「本当に、申し訳なかった。気づいたら移動時間だったんだ。」 「もーいいよ。ただし、次からは気をつけてよ〜!」 「うん!」 「おう!」 遊園地の後は、お土産屋さんに行ったりお昼を食べたり、野球観戦をした。 時が過ぎるのはあっという間で、もう今日泊まるホテルに到着した。 「皆さん、今からバスを降りてキャリーケースを取ってください。そして、そのままエントランスに入って班ごとに並び替えてください。」 ついに、ゆっくり休める場所に着いた。 俺は、少し安堵しながらエントランスに並んだ。 「はーい、皆さん。今日はお疲れ様でした。ホテルの部屋分けですが、このグループのまま1班につき1部屋です。 くれぐれも、問題を起こさないようにしてください。」 男女同じ部屋…。 後から聞いたけど、一応部屋の仕切りはあるそうだ。 「じゃあ、お部屋へ行こうかっ。楽しみー!」 部屋へと移動して数分。非常口の近くに俺達の部屋を見つけた。 「じゃあ、私開けるよ〜!」 ガチャ、ガチャ、カチッ 中に入ると、いつものホテルとは一味違うお洒落な感じがした。 「わー、すっごい。ベッド、フカフカだ! シャワールームも広いよ〜!!!」 「おー、すごーい。ね、琉斗、神龍!」 「ほんとだな!」 盛り上がった後は、荷物整理とお風呂順番をジャンケンで決めた。 最初はグー、ジャンケンポン! 勇心と葵がまず対決した。 結果は、葵の一発勝ちだった。 負けた勇心は、 「わー、嘘だろ〜泣。でも、ここはレディファーストとだよね!」 と、切り替えていた。早いなー。 次に、女子が皆ではいるのか、1人ではいるのかを決めた。 琥珀は、3人で入りたいと言っていたが姫和は、1人の方がゆっくりと入れると思ったのか申し訳なさそうに断っていた。 そういうわけで、琥珀と葵の2人が一番風呂。 姫和は、その後になった。 男子チームは、勇心と琉斗の2人が1番に、俺は2人の後に決まった。 お風呂場が2つあるのでそれぞれ2人ずつがお風呂に入りに行った。 その間、俺と姫和は2人きり。 「姫和、しばらく暇だろうから話でもしない?」 俺は、咄嗟に聞いた。 「うん、そうだね。」 「じゃあ、俺の秘密の話を聞いてくれないか?」 「うん。聞かせて欲しい。」 「ありがとう。 俺はね、瀬戸内一族という代々水神様の力を受け継ぎし物の末裔で水の力を操る事が出来るらしいんだ。 そして、それとは別に掟(決まり)が存在している。俺の家にある書物によると、 瀬戸内一族 の者は産まれた瞬間から必ず許嫁が決まっ ていて、その者以外との婚約は認められないって。 そして、俺達一族以外の者には力の事について秘密にしなければいけないんだ。」 「そうなんだ…。でも、私に話してしまって大丈夫なの?」 「大丈夫。それに姫和には、この力の事を話しておきたかったんだよ。聞いてくれてありがとな。」 「ううん。私こそさっき沢山話を聞いてもらったから。」 「あっ、あのね……神龍君。」 「どーした?」 「私も似た力を…。」 力…? 「あー気持ちよかった。な、琉斗。」 「そうだな。」 琉斗と勇心があがってきたのだ。 なんだろう、まぁ大丈夫だろう。 「じゃ姫和、俺今から風呂に入ってくる。」 「うん、行ってらっしゃい。」 姫和は、笑顔で手を振ってくれた。 俺も振り返した。姫和の優しい笑顔に、またドキッと俺の胸がなっていた。 風呂に入りに行った俺は、ため息をついた。一日ハードなスケジュールで疲れた。 このお風呂場は、薄い壁越しにあるらしい。 だからか、ぼーっと体を洗っていると琥珀や葵の声が聞こえてきた。 「ねーね、葵ちゃん。」 あの二人いつの間にか仲良くなったんだな。 「琥珀ちゃん、どーしたの?」 「ずーっと思ってたんだけどさ〜、姫和ちゃんと神龍ってお似合いだよね〜! そう思わない?」 え、琥珀何言ってるんだよ…。 「私も、そう思ってた。でも、皆が何も言わないから言い出しにくかったんだよね。2人って、付き合っているのかな?」 「うーん、どーだろう。多分、付き合ってはないと思うよ。それにしても、2人は鈍感なのかな〜?」 「全然、気づいてないからね。まぁでも、その内って感じだと思う。」 「なるほど〜。そうかもね。」 何が言いたいのか、全く分かんない。 まぁ、いっか。 全て洗い終わり、湯船にゆっくりと浸かる。 柚子のほのかな甘酸っぱい香りが心地よい。 「じゃー、うちら上がろ!」 「そうだね。」 そう言って、2人は上がって行った。 その後、バトンパスのようにして姫和が入ってきたらしい。 姫和は、はぁーとため息をついていた。 そして、独り言を言っていた。 「どうしよう。いつ神龍君に話すべきかな?」 うん? 俺に話が? 「ひ・よ・りー、聞こえるかー?」 「えっ、神龍君!?」 「そうだよ、それで俺に話したいことって何? もし、言いたくないことなら無理には聞かないけど。」 「あの、神龍君。ここ響くから…その、夜皆が寝たあとに神龍君の部屋に私が行ってもいいかな? すごく大事な話なの。」 そこまで、皆に聞かれたくない話なんだ。 「分かった。後でな。」 「うん。」 話を一旦終えて俺は上がった。 その後、姫和も上がってきて皆で晩ご飯を食べた。 料理は、とても豪華で鯛の刺身や揚げたての天ぷらなど日本料理がとても美味しかった。 ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ 夜になって、歯磨きをしていた。 すると、勇心君が歯ブラシセットを持って洗面所に来た。 「おう、姫和。お疲れ様。」 「お疲れ様、勇心君。」 勇心君とちゃんと話すのは、これが初めてだ。 「あのさー、琥珀って好きな人いるの?」 えっ、もしかして…。 「勇心君って、琥珀ちゃんの事好きなの?」 「ま、まぁねー。」 と、少し照れながら言っていた。 「私ね、琥珀ちゃんと恋愛話をした事がないんだよね。だから、力になれそうにないかも。」 「そっかー、ありがと。」 と、言って戻ろうとしていた。 あ、一つだけ方法がある! 「あ、ちょっと待って。それなら、今日の夜に多分だけど恋愛話になると思うからその時にさりげなく聞いてみようか?」 「あ、いいの? でも、僕の気持ちを言ったり悟られたりしないようにお願いね。」 「分かった。頑張るよ!」 そう言って、私達はみんなの元へ戻った。 初めは、トランプでババ抜きをした。最後は、琉斗君だった。次に、神経衰弱をした。私は、記憶力が良い方だから勝つことが出来た。 ワイワイ盛り上がっていると、気づいたら22時を回っていた。 「アナウンスします。消灯時間なので寝る準備を開始してください。」 先生の声だ。 「じゃあ、そろそろ布団に行こ〜。」 琥珀ちゃんの声掛けで皆、自分の部屋に向かった。 仕切りの開閉が出来るから、女子チームは仕切りを少しの間だけ開けた。 「あの、さ、3人で恋バナしない?」 琥珀ちゃんは、少し頬を赤らめて言った。 「うん。いいと思うよ。」 と、私は言った。2人は、少し驚いた顔をしたが、 「よし、じゃあ決まりね!」 と、言ってくれた。 「じゃあ、琥珀ちゃんからでいい?」 と聞くと、 「うん、OK!」 「私ね、勇心の事がずーっと好きなんだよね。」 「「えーーーー!」」 葵ちゃんと顔を見合せて言った。 「中高一緒でさ、サッカーしてる時の真剣な顔を見た時にあー、すごいな。やりたい事見つかってるのかな…。って憧れだった。でも、それだけじゃなくて私が教科書を忘れた時見せてくれたり、勉強を放課後に教えてくれたり。 何事にも一生懸命でその姿を好きになったんだ〜。」 まさか、勇心君と琥珀ちゃんは両片思いだったなんて…。 「そうだったんだね。」 「うん。」 「じゃあ次、私言うね…。」 葵ちゃんが言った。 「私ね、今まで恋なんてただの心の病の一種としか思えてなかった。その考えを持ち続けながら中学卒業してこの高校に入って、琉斗君と出会った。初めは、真面目で失礼だけど堅物な人だと思ってた。けれど、皆の事を良く見てて…。そんな姿に、私この人の事が好きなんだって…。」 葵ちゃんは、琉斗君の事を好きなんだ。全く知らなかった…。 「琉斗君、優しいね〜。」 「うん!」 初めて、葵ちゃんが照れているところを見た…。可愛いな〜! 「「次は、姫和ちゃんだよ〜」」 2人が同時にそう言った。 「私は、好きな人ではないかもしれないけど、憧れ?みたいな人なら居るかな。」 「ふむふむ。その人はだれ〜?」 琥珀ちゃんと葵ちゃんは目をキラキラと輝かせていた。 「神龍君が憧れの人なの。 私が転校してきてすぐ修学旅行があると知って、このクラスで上手くやれるのか不安でいっぱいだったの。けれど、神龍君は隣の席だった私に同じ班になろうって声をかけてくれた。その時は嬉しくてなんて優しい人なんだって思った。でも、一緒に居ると安心できて居心地が良かった。 だから、私も神龍君みたいになりたいって…。だから、憧れの人なんだ。」 「なるほど〜、憧れね…。」 と、琥珀ちゃんが言っていた。 「あの、姫和ちゃん。それって、憧れだけではないと思うよ!あくまで、私の考えだけど…。根拠はさっきの話で、姫和ちゃんの気持ちがよく分かったから。 後は、姫和ちゃん自身次第だよ。憧れの先の答えに気づくかは。」 よく、葵ちゃんの言っている意味は分からないけど、 「うん!」 と、答えた。 恋愛話で盛り上がった女子チームだったけど、22時をかなり過ぎていたので仕切りを閉じて各自寝始めた。 皆の、寝静まった頃を見計らって私は、静かに仕切りの外へと出た。そして、神龍君のいる仕切りの部屋へと向かった。 なんだか、悪い事をしているみたいでハラハラする。 あっという間に、仕切りの前までやってきた。 コン、コン、コン 力を抜いてノックをすると、中から神龍君が出てきた。 「どうぞ、部屋に入って。」 手招きされて中へと入る。女子部屋とは違って壁が厚かった。 「うん、ありがとう。」 胸がドキドキ音を鳴らしていて止まらない。恥ずかしくて俯いてしまう。 「あ、ここに座っていいよ。俺は、ベットの方に座るから。」 「うん。」 「それで、俺に話したい事って何?」 「さっき、神龍君が話してくれた力の事なんだけど…。 私にもそれと似た力を持ってるらしいの!」 思い切って言ってしまった。 「えっ、それってどういう……?」 「少し長くなるけど、話聞いてくれる…?」 「うん、聞く…。」 「私は、空野一族の末裔なの。私達の一族は、代々愛の奇跡を起こす力が宿っているらしい。この力の事は、神龍君と同じく他の人には言ってはいけないの。」 「まさか、姫和もその力を持っていたなんて…驚いた。」 「私もだよ、神龍君。色々と偶然だねー!」 「そうだな。でも、これから俺らはどーすればいいんだろうか?」 「確かに。力の事はとりあえずは大丈夫だと思う。けど、俺にはもう1つの力があったんだ。」 もう1つの力? 「それって、どんなの?」 「それは、人の心の声を聞くことだ。でも、聞こえるのはたった1人。姫和、君だけなんだ。」 「えっ、うそ! ほ、本当にそうなの?」 「うん、そうなんだ。黙っててごめん…。」 「ううん。それに言いだしずからかったよね。話してくれてありがとう。」 「うん! 姫和も力のこと話してくれて嬉しかった。ありがとう。」 「いえいえ。」 「じゃあ、姫和。そろそろ戻った方がいいかも。先生が見回りに来るから。」 「分かった。またね。」 そう言って、扉を開けようとした時だった。 コツ、コツ、コツ 「嘘だろ、先生が見回りに来た。 やばいな、とりあえず隠れるぞ。」 「あ、うん!」 私達は、慌てて布団に入った。神龍君は顔を出して寝たフリを、私は壁側によって神龍君の背中にくっついて隠れた。 ガチャッ 扉の開く音がした。寝てると思ってくれたのか、先生はあっさりと扉を閉めて出ていった。 「ぷはぁ、助かったー。怖かったよ…。」 少し、泣きそうになる。それに気づいたのか頭を撫でてくれた。 すると、不安が一気にどこかへ飛ばされていくようだった。 「ごめん、ありがとう。」 胸が少しずつ熱くなっていくのを感じた。ドキドキが止まらない。 「うん。落ち着いたみたいで良かった。先生も居ないみたいだし、戻った方がいいよ。」 そう言って、私の手を掴み起こしてくれた。 「そうだね、今日はありがとう。おやすみなさい。」 「ああ、おやすみ。」 こうして、お互いの秘密を共有することが出来た。
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