2. 憧れか恋か

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2. 憧れか恋か

転校初日は、やっぱり環境の変化に追いつけなかった。 でも、座席に着いた後、クラスの子達が何人か話しかけに来てくれた。 「ねーね、初めまして。私、龍石琥珀だよ〜! 姫和ちゃん、良かったら私とお友達になってくれたら嬉しいな!」 「うん! 琥珀ちゃん、よろしくね〜!」 とある日、私は隣の席である瀬戸内君と話す機会が訪れた。 それは、学活での出来事。 この高校は、もう少ししたら大イベントの1つである修学旅行があるそうで、私も参加するのだ。 2年にあがってから2回目の修学旅行だった。 と、思っていたら先生が栞を持ってやって来た。 「はい、皆さん席に着いてー。 今から修学旅行の栞を配布し、説明を行います。その後、班を決めるから誰となりたいか考えとくように。」 「「はーい!」」 私、どうしよう。 ソワソワしていると、瀬戸内君が私の机をトントンと叩いてきた。 「ね、姫和。修学旅行の班、誰か行く人決めた?」 そういえば話すの初めてだなー。 「まだだよー。でも、琥珀ちゃんを誘ってみようかなとは思ってるよ。」 「そーなんだ。俺も一緒の班、なってもいい? そんなに一緒に回りたい人いないし、姫和ならしっかりしてるから安心だし。」 「いいよ。私、色々な人達と仲良くなりたいから。それに、神龍君は信頼できる人だから。」 「じゃあ、俺らは決まったな。後は琥珀か。一緒になれるといいな。」 「うん。ありがとう!」 私は席を立った。 「こ、琥珀ちゃん。あの、修学旅行の班良かったら、一緒にならない?」 「あ、うん! 私も誘おうと思ってて、でも先に姫和ちゃんが言ってくれたから嬉しくて! だから、ありがとう!!」 「うん!! これから、よろしく!」 「あと、神龍君も一緒に班入ってもいいかな?」 「姫和ちゃん、いつの間に仲良くなったんだねー!神龍と。」 「そんな事ないよー。だって、さっき初めて話したんだよ。」 「そうだったの! まぁでも、これからだよ。皆、仲良くなっていこうね。」 「うん。ありがとう! もし、他にも誘いたい人とかいたらなんだけど、いつでも言ってね。」 「分かった。」 こうして、グループが決まりつつあったのだ。 その後、先生が教室へと戻ってきて栞が配られ、説明が行われた。 次の日、琥珀ちゃんが3人の男女を連れて私の元にやって来た。 「姫和ちゃーん! 修学旅行のメンバーにこの人達も入れていいかな〜?」 「うん! もちろんだよ!」 えっと、まだ名前を知らないんだよね…。 「あの、私まだ3人の名前を知らなくて…。 その、教えて貰ってもいいかな?」 「あー、そうだったんだ! ごめんごめん 笑。じゃあ、まずは自己紹介からだね。」 「じゃあ、まず僕から。名前は、篠原勇心。 好きなことは、サッカー。よろしくね!」 茶髪で、少し焼けてる。沢山サッカーをしてるんだなー。 「次は、私。 川崎葵です。好きなことは、本を沢山読んだり、皆でグループ活動をする事です。よろしくお願いします。」 少し、クールな子だ。でも、本が好きなんだ! 「俺は、鳴海琉斗。特技は、料理だ。よろしくな。」 すごい。真面目…、な人なのかな? 「ほんじゃあ、私達も自己紹介するね〜。 私は、龍石琥珀。好きなことは〜、テニスをする事だよ〜!よろしくね!」 琥珀ちゃん、元気だな〜! 「最後に、俺は瀬戸内神龍だ。好きなことは、特にはないな。でも、皆で修学旅行を楽しめたら嬉しい。よろしくな。」 私、もっと神龍君に近づいてみたい…かな。 「うん、皆よろしくね。」 この気持ちは、憧れなのか好きなのか…。まだ分からないけれど、この修学旅行で少しずつ分かるといいな。 これで、メンバーは6人だ。皆で、思い切り楽しみたい! ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ 今日は、待ちに待った修学旅行当日。 姫和は、だいぶこのクラスに馴染めているようで、楽しい学校生活を送れているようだった。 しばらくして、体育館に続々と2年生が集まってくる。 「おはよー! 姫和ちゃん、修学旅行楽しもうね〜!」 琥珀は、テンションが爆上がりしてる。俺は、あそこまでは盛り上がれないけど楽しみではある。 「うん!!」 姫和、すっごく笑顔だ。この学校に来て初の大イベントだからなぁ。俺としても、沢山の思い出を作って欲しい。 しばらくして、葵・勇心・琉斗達も到着して班の場所に集まってきた。 「おはよ、姫和。」 そう、俺が声をかけたのは、姫和だ。 君は、いつも曇ることの無い笑顔で俺の事を見てくれる。 でも、それがかえって気がかりでもある。 笑顔で居続けることで無理をしてないのか。 でも、今のところは大丈夫そうだ。 「おはよう、神龍君。 今日は、いっぱい楽しもうね!」 と、君は両手を大きく上げて言った。 すると、笑いが堪えきれなくなった俺は、クスッと笑い出してしまった。 「え、どーしたの?」 姫和が、不思議そうに顔を覗き込んでくる。 「いや、姫和がそんなにテンション上がってるの初めて見たから。それに、手上げたままなんて面白すぎでしょ笑」 姫和は、俺に言われてやっと気づいたらしく、ずーっと手を挙げていた事への恥ずかしさを感じているみたいだった。 「もー、あんまり笑わないでよねー。」 と、姫和はずーっと笑っている俺に向かって微笑していた。 「はーい、それでは今からバスに乗って目的地まで向かいます。席順は一応、班ごとになります。場所は自由です。 じゃあ、移動してください。」 (琥珀ちゃんと隣がいいけど、葵ちゃんが先に約束してるみたいだ。) そんな声が、聞こえてきた。 やっぱり俺は、家族には言っていないもう1つの能力が目覚めているらしい。 (どーしようかな。勇心君は、琉斗君とかなー?) あー、どうして全部聞こえるんだろう。他の勇心や琉斗、葵とかの心の声なんて聞こえないのに。 というか、姫和って、勇心のことが好きなのか? いい事を聞けた気がする…。 けどこんな事するのはダメなんだけどな。 一瞬よぎった考えを頭の隅に置いた。 そして、考え込んでいる姫和に、肩をトントンとつついた。 「ね、一緒座らない? どーせ、皆ペア作ってるだろうし。姫和が隣なら落ち着くから。」 俺は、素直な方だと思う。だから、自分の意思・思いは出会った相手にはちゃんと伝えるようにしている。 姫和の心の声を聞くのは少し怖い。けど、どう思われたかぐらいは知っときたい。 ごめんな、姫和。今回だけ許してくれ。 まず、同じ空間にいる事が条件の一つだ。 次に、目を閉じて対象の人物の気配を感じとる。 そして、両手を2回叩く。 そうして聞こえるようになるのだ。 これはあくまで、長時間にわたって心の声を聞く為に使う儀式的なものだ。 少し力を使いたい時は、聞きたいと願えば簡単に聞ける。 ほんの数秒も経たないうちに、声が聞こえてきた。 (私が、隣なら…って。なんか、照れる…。) てっ、照れる。今、照れてるのか。 意外だ。姫和は、めちゃくちゃ優しくてそれでいてクールな人だって言う印象だったから。 「うん! これから、よろしく!」 照れ隠しの為なのか、姫和はテンションを上げてそう言っていた。 その後、席は勇心・琉斗 琥珀・葵 姫和・俺 の ペアに決まった。 ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ 座席に、移動し腰を下ろした俺は、隣にいる姫和を少し意識しつつ目を閉じて考え事をしている。 俺は、姫和が転入してきたその日に何かが心の中で動き出した気がした。 隣の席になり、班も一緒に組んでいる。 俺は、気づいたらいつも姫和を誘っている。まだそんなに親しくなれてないけど。 それでも、君は俺に優しく微笑んでくれる。 その笑顔をずっと俺自身の手で守りたい、そう思うようになっていた。 この気持ちは、一体なんだろうか? 恋…なのか、それとも憧れなのか。 この修学旅行で、自分の本心を明らかにしたい。 そう考えていたのだった。
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