5. これが…恋

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5. これが…恋

次の日、修学旅行2日目。 俺は、まだ昨日の余韻に浸っていた。 あんなにも、胸が締め付けられるくらいドキドキしたのは姫和が初めてだ。 俺は、本当に病気…なのか? 頭の中で色々考えつつ、キャリーケースを預けてバスに乗り込んだ。 昨日と同じ席に腰を下ろす。 そして、姫和は俺を見て、 「おはよう、神龍君。」 と、優しく微笑してくれた。 「おはよう。2日目も楽しもうな。」 「うん!」 「皆さん、おはようございます。昨日はよく眠れましたか?今日は、花ヶ崎市内にあるフラワーパークと「Trials of Love」という観光スポットに行ったあとに、各班ごとに花ヶ崎グリーンキャンプというところで一泊します。 今日も楽しんでいきましょう!!」 「「はーい!」」 今から、後1時間くらいでフラワーパークに着くらしい。 「ね、神龍君。」 「なに?どーしたの?」 そう聞くと、姫和が俺の耳元に口を近ずけて、 「あのさ、今から私の心を読んで欲しいの。お願い…!」 「うん、分かった。」 「ありがとう。」 姫和は、少し気まずそうな表情でそう言った。 (もし、聞こえててたら頷いてもらえるとわかりやすいから?) コクンと、俺は目を見て頷いた。 (あのね、昨日は言わなかったんだけど…。この力が目覚める時が決まっているんだってお母さんが言ってたの。) それは、初耳だった。瀬戸内家でそんな話は聞いた事がなかったから驚きを隠せない。 (それで、その時というのは…世界が滅ぶ寸前。つまり、地球滅亡の危機に晒された時らしいの。) えっ、そんなに大きな事に立ち向かわなければいけないのか…。俺は、自分の力を甘く見ていたみたいだ。 と、気になることがあり姫和の耳元に囁いた。 「なるほど、その時っていつなのか知ってるか?」 (それが、私の一族の情報はあまりなくて…。だから、神龍君の家の書物とかにあるんじゃないかな?) 確かに、俺の家には倉や屋根裏部屋。それから、俺の部屋にある隠し扉の先の部屋など沢山心当たりがある。 「そうだな、ありがとう。探してみようとは思うんだけど、一人だと全部の中から探し出すのは大変だなー。」 (それなら、私がお手伝いする事なら出来るよ。) でも、そんなことまで頼むのは申し訳ない。 「さすがに、迷惑をかけすぎるのは俺も本意ではない。それに、姫和にいつも助けて貰っているというのに…。」 (神龍君、私ね1度も迷惑をかけられたと思った事は1度もないよ。むしろ、私の方がいっぱい助けてもらってるんだよ!だから、正直もっと私を頼って欲しい。でも、無理にとは言わないから…。) 「姫和、ありがとう。俺の手伝い、お願いしてもいいか?」 (うん!もちろんだよ!) 「ありがとう!」 話を終えた直後、 「到着しました。バスから降りてガイドさんの指示に従ってください。」 と、先生がマイクで言っていた。 続々と、前の列から外に出ている。俺と姫和も続いて降りる。 やっぱり、今日も雲ひとつない青空でその下には沢山のフラワーロードが見渡す限り広がっていた。 「わー、綺麗だね! 神龍君!!」 「すごく綺麗だ。」 姫和と2人でこの景色を見られて嬉しい。 「これからは、自由行動を撮ってくださーい。時間になったらアナウンスがかかるのでここまで戻ってきてください。では、楽しんで〜!」 と、バスガイドの方が声をかけ、 「「はーい」」 と、皆元気よく声を発した。 「みんな〜、早く行こ〜!!」 俺、姫和と話しながら回ろうか…。 そう考えていると、 「姫和ー、一緒に回ろうよ。」 と、勇心君が声をかけていたのだ。 えっ、あの二人いつの間にかに仲良くなったんだ…。 「あ、うん。分かった。」 ひ、より…? なぜか、胸が苦しくなる。 俺の視線に気づいた勇心は、 「ちょっと、姫和借りてくね。」 と、言って2人で進んで行った。 「え、姫和ちゃん。どうしたんだろう…。」 琥珀が動揺している。 それを見た葵が少しソワソワしているのが分かる。 おそらく、琥珀は勇心の事が好きなんだろう。そして、あの二人は両思いか大切な話をしに行っているかもしれない。 「ね、神龍。あの二人の事、気にならないの?」 「え、俺?」 「うん。だって、姫和ちゃんの事好きなんじゃないの?」 「えっ、俺が姫和の事…好きなのか?」 「神龍、鈍感すぎだよ。」 「でも俺…。」 言葉を遮るように葵が言った。 「1つ聞くね。神龍君は、姫和ちゃんと一緒にいて何も思わなかったの?感じなかったの?」 「俺は、姫和といて心が暖かくなったり、胸がドキドキしたり…さっきの姿を見て、胸が苦しかった。」 「それを恋って呼ぶんだよ…。」 「これが…恋。」 「でも、あの2人は普段あまり話さないだろ? 多分、なにか大切なみんなには話せない話があるんだと思う。」 「なるほど…。まぁ、とりあえずは2人ずつに別れて2人を探そ。」 と、琉斗が声を上げた。 「あ、ああ。だな。」 「じゃあ、私は葵ちゃんと組むね。」 「分かった。」 「俺は、琉斗と組むわ。」 「じゃあ、また後でな。」 そう言って、二手に分かれ探しに出た。 「な、神龍。俺ね、姫和ちゃんと関係があったみたいなんだよ。あの子が転入してきた時、一目で分かったんだ。家で探し物をしていたら、古い書物を見つけたんだ。気になって中を見て見たら、俺と姫和は許嫁であるという証だったんだ。」 「ひ、よりと許嫁。そっかー。」 「事実なんだ。神龍、申し訳ない。でも、どうしようもないんだ。」 「そんな…。」 「そ、そういえば、俺にも許嫁がいるらしいんだ…。 誰なのかは分からない。けど、絶対に自分が心から好きになった人と結ばれたいんだよ俺は。」 「俺だって、葵ちゃんと恋をしたいんだよ。でも、葵ちゃんにも許嫁がいるんだって…。」 「それって誰なんだ?」 「勇心、だよ。」 「そして、琥珀ちゃんの許嫁は神龍、君だよ。」 嘘だろ。 こんなの、誰一人として幸せになれないじゃないか。 「神龍、一つだけ方法がある。確証はないけど…。」 「聞かせてくれないか?」 「うん。それはね、俺達から好きな人に告白するんだ。そうして、両思いだった場合2人で許嫁を変えてもらう。 もしくは、許嫁制度を無くさせる。」 「それって、結構ハードルが高いよな。」 「そうだよね。でも、これしかないよ。」 「分かった。じゃあ、今日のキャンプで男子会議をしよう。」 「そうだね。2人を探そう。」 「ああ。」 ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ 「勇心君、どこで話す?」 「そうだねー、じゃあ、あの日陰に座ろ。」 「うん。」 言える範囲で答えよう。じゃないと、琥珀ちゃんの想いも壊してしまうかもしれない。 「早速、聞くんだけどー。琥珀、好きな人いるの?」 「うん、いるみたいだよ。」 「そっかー。その人の事、琥珀なんて言ってた?」 「えっとー、 好きな事に全力に取り組んでいる時の真面目な顔を見て初めはやりたい事を見つけていてすごいなーって憧れてたんだって。でも、何事にも全力で諦めない。その姿を見て好きになったんだって言ってたよ。」 「そっかー、なるほどね。」 「ありがとう、教えてくれて。」 「うん!力になれて良かった。」 「最後に一つだけいいかな?」 「あ、うん。」 「姫和って、神龍の事どう思ってる?」 「一緒にいると楽しくて、時々胸がドキドキしたり苦しかったりして色々な感情を教えてくれる。それだけじゃなくて、周りのことを良く見てて臨機応変に対応出来る姿を見て憧れの人なのかなって…。」 「そっかー。俺から一つアドバイスをすると、神龍の良いところを沢山言えるくらい姫和は神龍の事を見ている。 そして、そのドキドキする気持ちは憧れでは無いよ。」 そう言って、勇心君はニコッと笑った。 「もしかして、これが…恋。なのかな?」 コクッと頷いてくれた。 「アドバイス、ありがとう。やっと自分の気持ちに気づくことが出来たよ。いつか、絶対この恩を返すね。」 「いいよ。琥珀の事色々教えてくれたから、それでチャラということで。」 「うん、ありがとう!!!」 「よし、話も聞けた事だし、みんなの所へ戻ろっか。」 「そうだね!」 そして、来た道を戻っていた時。 神龍君、琉斗君とバッタリ会った。 「よっ、神龍、琉斗。どーしたんだ?」 「どーしたじゃないだろ。2人とも、せめて場所くらい言ってから行けよ。皆、心配になって探してたんだぞ。」 神龍君、めちゃくちゃ怒っている。ううっ、怖い。 「ごっ、ごめんなさい。迷惑をかけてしまって…。」 と、深く頭を下げた。 「ほんと、ごめん。俺が重大な話があって…。神龍達がいるとどうしても話せない内容だったから…。」 「もーいいから。頭上げて、戻るぞ。」 「うん。」 と、勇心君の隣を歩きながら話をしていると…神龍君が私の手をグイッと引っ張った。 「えっ、どーしたの!?」 なんか、神龍君おかしい。 「いや、別に何も無いけど…。」 「そっか…。」 沈黙が続く中で、神龍君の手は私の手をギュッと握りしめていた。
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