6.告白と地球

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6.告白と地球

修学旅行での事で、私と神龍君は今もぎくしゃくしていた。それだけではなくて、琥珀ちゃんや葵ちゃんなどともあまり顔を合わせられていない。 そんなある日の放課後、神龍君が私に声をかけてくれた。 「ひ、姫和…。あのさ、この間話した書物探しの手伝いなんだけど、今から出来そう?」 「うん、予定も特には無いからいいよ。行ける。」 と、返事をした。 「良かった。ありがとう。」 なぜか、さっきまでの表情とは違いホッとしているように見えた。 「ううん、元々は私が言い出した事だから。」 「そうだったな。笑」 「じゃあ、行こっか!」 「うん!!」 あんなにも、ぎこちなかったはずなのにその気持ちが一気にどこかへ消えていった。 色々な事を考えたり、話をしたりしているうちに瀬戸内家の大きな家に着いた。 「ここが、俺の家。入っていいよ。」 外観は、和風で大きな建物。そして、中には白い石が地面一面に並んでいた。 「お邪魔します。」 神龍君の部屋へと向かう。 整理された部屋には、沢山の本が並んでいた。 「まずは、この部屋から探そうと思うんだ。そこに置いてあるお茶、飲んでからでいいから。」 「分かった、ありがとう。」 そう言って、19時までかかって全て探し終わり書物を沢山机に並べた。 「これで、全部だと思う。ありがとう。」 「ううん、いいよ。中は?」 「こっちは家系図だ。」 「あ、あった。力の事が洗いざらい全て書いてある。」 確かに、瀬戸内家の力の事や他の力について書かれている。 「あの、俺の話を聞いてくれないか?」 いきなりの真面目な顔にドキッとする。 「う、ん。」 「あのな、初めて姫和に会った時、俺の中で何かが動き出した気がしたんだ。初めは、話しやすい友達だと思ってたけど、修学旅行で、自分の気持ちに気づいたんだ…。 俺、姫和の事が…好きなんだ。だから俺と付き合ってくれませんか?」 「私も神龍君と出会って初めのうちは優しい男子友達だって思ってたの。けれど、神龍君の優しさに触れて、自分の初恋に気づく事が出来た。だから、私こそ神龍君…あなたの事が好きです。よろしくお願いします。」 「やった、すごい嬉しい!」 「うん、私もすっごく嬉しいよ!」 お互いに見つめ合い、気持ちを確かめ合うように抱きしめ合った。 初めての両思い、この気持ちと一緒に大切にしていきたい。 ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ 俺は、ついに姫和と付き合う事になり高揚感でいっぱいだったある日。 父親に、彼女の事を勘づかれてしまった。 俺の秘書もしている執事が全てを父に話したらしいんだ。 「神龍、お前は自分の許嫁がいるのにも関わらず何をしているんだ。まさか、長年受け継いできた掟を破るつもりなのか?そんな事、他の誰も認めんぞ!」 「俺は、掟なんていう古いものに囚われたくないんだ。大体、なんでいつも邪魔をするんだよ! 俺が、幸せになっちゃいけないのか?」 「そんな事は言ってないだろ! でもな、神龍の前の代からずっと掟を破ろうとするものは少なからずいたが全員失敗した。そして、罰せられた。」 「俺は、そんなのに屈したりしない。ただ、姫和と幸せに暮らすだけだ。」 「そうか、それなら最終手段を取るしかないようだ。」 そう言って、どこかへ電話をかけ始めていた。 すると、スピーカーにして他の一族の話を俺に聞かせてきた。 「わしのところの葵も許嫁制度は反対だと抗議にきたよ。そっちは?」 「私のところは、琥珀がきたよ。反抗的な態度だよ。」 「他の琉斗の所や勇心の所も同じみたいだ。」 皆も動いたんだ。 「もうこうなったら、あの緊急作戦…決行するか?」 「そうだな、世界六大天とも言われている一族が子供ごときに掟を破られてたまるか! 今までの努力が水の泡じゃないか。せっかくの一族繁栄を邪魔するなら我が子だろうが許さない! 作戦決行だ。これで、お前らもろとも地球とおさらばだ。」 「なっ、何をしたのか分かっているのか? ただ、俺は姫和と一緒にいたいだけなんだ…。なのに、なんで俺の気持ち分かってくんないんだよ…!」 「そんなの、分かるわけないだろうが。どうでもいい。 もうお前と会う事は無いだろうな、神龍。俺はこの星を去る。」 そう言って、スイッチを起動させ宇宙船に乗り逃げていった。 このまま、俺達は死んでしまうのか? 「姫和、聞こえるか!?」 携帯で電話をかける。 「うん!聞こえるよ! でも、さっきから地震で足元がずっと揺れてるよ…。」 「姫和、落ち着いて聞いてくれ。今から地球が消滅する!お父さんに許嫁の事話しても無駄だった。それどころか、他の仲間を集めて俺たちもろとも消してやるって…。」 「そっ、そんな…! どうしたらいいの?」 「とりあえず、合流しよう! 地球の核がある海辺に来てくれ!花ヶ崎海浜公園まで!」 「分かった、急いで向かうね!」 「あぁ、分かった。また後でな。」 電話を切り、走り出す。 5分ほど、走り続けてようやく見えてきた。待ってて姫和今行くから! 「ひよりーーー!!!!」 大声で叫んだ。 それと同時に、 「しんりゅうーーーくん!!!!」 と、呼ぶ声が聞こえてきた。 「姫和、ごめんな。こんな事になる前に気づけなかった…。」 「ううん、自分を責めないで…。 私、神龍君とこれからも一緒に居たい。ここで諦めたくないよ…。」 「俺もだ、姫和と幸せになりたいんだ…。」 互いに涙を流しながら、見つめ合う。 ドクン、ドクンと脈が重なり合う。 そして、キスをした。 すると、身体から力が漲って来るような感覚が2人を包んだ。 その瞬間、俺の手の平に『水』という文字が浮き出てきた。 姫和も同様、手の平に『愛』という文字が現れていた。 おそらく、これが世界に2つの力なのかもしれない…。 「姫和、行くぞ!」 「うんっ!」 互いに手を取り合い、文字を重ねた。 そして、強く強く祈った。 「どうか、水神様よ。姿を現し、この地球を民をお救い下さい。お願いいたします!」 祈りを続けている姫和を横に、俺は両手を持ち上げ海の水をゆっくりと操る。 すると、心に話しかけてくる誰かの…水神様の声が聞こえてきた。 「神龍よ。お主は、掟を破りここまでの破滅を招いた事は分かっておるよな? そうまでして、なぜ抗う。」 姿は、水を纏った神々しい龍の姿をしていた。 「俺には、この手で守り抜きたい好きな人が出来たんだ。掟で縛られて愛する人を守れないなんて辛すぎるだろう…。」 「その気持ちは、分からなくもないぞ。我にも、愛する者がおったからのう。だが、神龍。代償というものが存在する事を知った我は、拒んだ。そのせいで1度愛する人を失った事がある。言っている意味が分かるかね?」 「もちろん、俺は逃げたりしない。代償ならいくらでも受けてみせる。だから、どうか力を貸してください!」 「今回が最後だ。この一度を二度と無駄にするでないぞ。そして、愛する者の手を離さぬようにしなさい。」 「はい!!」 返事をすると、強い光を放って空へと消えていった。 そして、金色に輝く雨を地球に降らせた。 その瞬間に、地震は止み地球に入ったヒビが癒えていったのが何故か分かった。 「よか…った。」 ホッとした時、目の前がボヤけて後ろに倒れた。 「神龍君!!」 どんどん声までも遠ざかっていくようだ。これが…代償なんだな。 ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ 神龍君は、力を使ったあと砂浜に倒れ込んでしまった。 「しんりゅうくん!!」 何度も何度も呼びかけても返事が無い。もしかして…。 いや、そんな事考えたくないよ…。早く、救急車を呼ばなくちゃ。 「もしもし、花ヶ崎海浜公園まで急いで来てください。人が倒れました!」 冷静になれなくなった私はあたふたしながら救急車を待った。 5分後、担架を持った隊員の人達が走って駆け寄ってくる。 「それでは、搬送するので彼女さんも同乗してください。」 「はい。」 私は、神龍君の手を握りしめながら病院に着くのを待った。 やっとの事で着いた病院はとても静かだった。 「では、彼女さんはここでお待ちください。」 「分かりました。」 担架で運ばれていく神龍君を涙を流しながら見送った。 あれから、何時間経ったことだろう。 そんな時、さっきのお医者さんが出てきた。 「あ、あの。神龍君の容態は…どうですか?」 「一命は取り留めましたが、意識がまだ戻りません。 手術は、していませんので。」 「そうですか、ありがとうございました。」 私は、唇をぎゅっと噛んで涙を堪えた。 そして、深くお辞儀をした。 5分程トイレで心を落ち着けた。 平常心を保って、病室へ向かった。 震えている手で取っ手を握る。 一息吐いて、扉を開けた。すると、点滴に繋がれているだけでなく他にも機械が取り付けられていた。 私は、中に入り椅子に座った。 動かない手を握りしめ、ポロポロと涙を流す。 「神龍君、早く起きてよ…。 どうして、目が覚めないのかなぁっ…。」 嗚咽を漏らしながら、沢山泣いた。抑えきれない…。 お医者さんも、原因が分からないって言うし…。 お願い、お願いだから誰かっ! 神龍君を助けてよ……。 愛おしさで胸がいっぱいになる。 「神龍君、大好きだよ!」 と、キスをした。もしかしたら、起きるかなと思ったけど効果はなかったみたい。 私は、手を離すことなく眠りについた。 どうやら、疲れたみたい…。 睡魔に引き寄せられ、重い瞼を下ろした。 しばらくした頃、夢を見始めていた。 「姫和、久しぶりだね。」 優しく包み込んでくれるこの声は…お母さん? 「お母さん、なの?」 「うん、そうだよ。元気だった?」 ずっと、この声を聞きたかった。 「お母さん、どーしよう…。わっ、私、神龍君を助けたいのにっ…。 眠りについて目が覚めないの…。」 「その、神龍君というのは誰なの?」 「私の大切な人。」 「そっか。姫和にも愛する人ができたんだね。嬉しいなー。」 お母さんの頬を涙が伝っていた。 「うんっ。」 「お母さんね、もう死んじゃってるけれどこうしていざと言う時のために、姫和の守護霊として残ってたの。」 「そうだったんだ。」 「うん、私ようやく役に立てるよ。 姫和、その神龍君を私が助けることが出来るけれどどうする?」 「そんな事、出来るの? お願い、お母さん。神龍君を助けて欲しい。」 「うん、分かった。またいつか会おうね。」 「うんっ、ありがとう。お母さん!」 姿が遠のいていく。徐々に現実へと引き戻されていく。 何日、眠っていたのだろうか。時計を見るといつの間にか2日が経っていた。 目が、覚めると神龍君の手がピクっと動いた気がした。 「神龍君!」 必死に声をかけ続ける。すると、閉じ続けていた瞼がゆっくりと開いた。 「ひ、より…?」 「うん、そうだよ!」 やっと、やっと声が聞けた…。 「俺、何があったんだ…?」 「倒れたんだよ…。心配したんだからね…!」 「ご、めん。」 ゆっくりと起き上がって私を優しく抱きしめてくれた。 やっぱり、暖かいなぁ…神龍君の温もりは。 そして、互いに瞳を潤ませ笑った。 「これからも、ずっと君を離さないよ。」 「私も、神龍君を絶対離さないよ。ずっと、一緒に居ようね。」 「「大好きだよ」」 ーそして頬を赤らめながら唇と唇を重ねキスを交わした。
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