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私いま、すごく幸せだよ
「先輩のおばあちゃんだよ。そして、近づいてきた男というが……俺のじいちゃん。俺は、じいちゃんみたいになりたくなかった」
「もしかして、藤野の願いって……」
「ずっと言えなかった。言っちゃったら、先輩は叶えるんでしょ? 自分の気持ちに嘘ついて」
「そんなことない。私は、私は……待ってたよ。藤野の言葉。藤野が優しくていい後輩だからさ、いつかそうなりたいってずっと願ってた」
私は藤野を抱きしめた。
降りしきる雪から彼を守るように。
「ねえ、藤野。言ってよ、藤野の願い。叶えるのはすごく簡単だから」
「先輩……じゃあ、一度きりしか言わないよ。……俺の彼女になってください。これが俺の願いです」
「うん、叶えてあげる。私の願いも叶えてね。私の彼氏になって」
藤野の腕のなかは、あたたかかった。
雪の寒さなんか全く感じなかった。
あの日から、私は藤野と付き合っている。
私はみんなの願いを断れるようになった。
自分の意見を言ってもいい、少しくらい雪が降っても大丈夫だと、藤野はいつも言ってくれる。
ばあちゃん。ばあちゃんの言ってたこと本当だったよ。
かなえびとの初恋は叶うんだね。
私いま、すごく幸せだよ。
【了】
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