学校にて

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学校にて

 お葬式後、荼毘に付されたのに、レイコさんはまだ私に憑いていた。 『死んだの初めてだし、よく分からないんだよね。……四十九日経ったら自然に消えるんじゃない?』  けろりとした顔でそう言うと、レイコさんは私のベッドの上に涅槃像よろしく寝そべった。  雪が降った日から怒涛の一週間が終わり、私は日常生活に戻った。レイコさん込みで。  三学期は忙しなく過ぎていく。三年生の卒業も近く、一・二年生主催の送り出しイベントの準備も進んでいる——はずだったが、今年は係の人員が足りず、追加募集する事になった。 「誰かやりたい人はいるか?」  ホームルームで担任が募ったが、案の定、誰も手を挙げない。教室に重苦しい空気が流れた。このままだと担任が指名する事になるだろう。  私はできる限り存在を消すよう努力した。急に肩を強く押された衝撃があり、気がつくと、私は自分の後頭部を眺めていた。なぜか私の左手が挙がっている。 「じゃあ、高久、よろしく頼む」  教室内にパラパラと拍手が響く。私であるレイコさんが、立ち上がって一礼した。 『ちょっ、レイコさん!?』私の声なき絶叫が、教室にこだました。 『面倒事を押し付けあってる空気感、苦手なの』 「そのせいで、私が面倒事を被る事になったんだけど!?」 『あはは、本当に申し訳ない。係の仕事は入れ替わって私がやるから、許して』  レイコさんは顔の前で両手を合わせ、何度も頭を下げた。決まってしまった事はもう仕方がないので、それで手を打つ事にした。  実際、レイコさんの社会人経験が功を奏し、係では絶大な力を発揮した。送り出しイベントはレイコさんの活躍で、無事に終了した。 「遥、係では人が変わったように頑張ってるね」という友人達には、実際中身は違う人ですとも言えず、乾いた笑いで「そうかなぁ?」と返した。
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