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知った顔が一人。
知った顔がまたもう一人、居なくなる。
居なくなる理由は、敵との交戦で敗れての消滅か、あとはカミサマの気分次第。つくり変えられる。
しかし天使にとって、それには慣れている。
大きく黒い影の敵との交戦。
天使たちは首に下げてる十字架を凡ゆる武器に変えて、戦う。激しく火花を散らしては、自分が存在し続ける為に。
仲間の一人が悲鳴を上げるも虚しく途絶えて、風に流れて砂の様に消え去った。そしてまた一人同じ様に……、それでも悲しんでいる暇は無かった。
懸命に応戦して黒い影を倒すも、消滅した仲間の天使の形見としてその場に残っているのは、折れてしまった十字架だけ。
生き残った仲間の天使の一人はそれを拾い、自分の武器を十字架に変えると、先程まで戦っていた場所に祈りを捧げていた。
「……普通じゃないな」
仲間の天使がぽつりと誰かに聞こえるくらいの声で呟いた。声には哀しみが含まれていて弱々しい。
「なんて?」
少女の白い天使は首を傾げる。
彼が何に対して『普通じゃない』と言ったのか、彼女は理解出来なかった。彼女の顔からは特に何も読み取れそうなものが無い。“虚無”と云えば、それが相応しいだろう。
仲間の天使は怪訝そうな顔を浮かべる。
「お前は我々と同じ天使だが、居なくなった仲間に対する慈悲は無いのか?」
少女の白い天使の目には光が無く、まるで心の無い人形だ。
「どうして? 私達って、カミサマに何体でも仲間を生み出して貰ってるじゃない?」
「いや……、まぁそれはそうだが……」
心の無い人形なら、動かす人が居ればその人の云う通りにしか動かない。……彼女がカミサマに依存しているのなら。
「……生み出して貰っても、同じ様な個体がもう一度現れるとは限らないだろう?」
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