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「……ルツェ、覚えておくといい。私達の思う“普通”と、人間の思う天使とは違う。人間の前でも、居ないところでも、私達の思う“普通”を振る舞うのは失礼に値する」
「どうして?」
“普通”とは何なのか。
ルツェと呼ばれた少女の天使は、ただ疑問を浮かべるだけだった。その答えを彼女は未だ見つける事は出来ない。
「カミサマは元々──」
そこで仲間の天使の声は途絶えた。
* * *
「──どうしたの?」
聞き覚えのある少女の声が突然、ルツェの耳に入り込んで来た。
それから彼女は辺りを見回して、自分の世界に入り込んでいた事に気付いた。
「……ゴメン、ちょっと昔の事を思い出していた」
「大丈夫?」
心配してくれるのは、烏の濡れ羽色の長くて美しい髪に、同じ色で統一した様に黒いセーラー服を着ている──向日葵の様な少女だ。
彼女は天使では無く人間であり、種族は違えどルツェにとって彼女は“友達”──いや、“親友”とその言葉で言い包めれるものかは分からない。
兎に角、ルツェにとって彼女は大切な存在だ。
彼女をこれ以上心配させまいと、ルツェは笑顔をつくった。
「うん、私はもう大丈夫」
この関係は周りから見たらきっと“普通”じゃないかもしれない。でも失いたくないと、彼女は強く望んでいる。
──なんて事ない日々は思いもしないところで突然、終わりを迎える。
よく知った顔が一人、『さよなら』も云わず、言えずに居なくなってしまう。
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