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* * * 「ノエル君」 「……ん?」  男の子の声がした。  一人は少し低い声で、もう一人は少し高い声だ。  その場所は本来であれば、誰にも辿り着けない。  雪の様に真っ白で何も無さそうで、何も無いという訳では無い。遠くから見たら何も無い様に見えるが、近付いてみたら何かがあった事に気付く様な、そんな空間だ。  だからといって季節が冬とは限らない。 「人間であるからこその君に一つ聞いても良い?」  少し低い声の主は、ちんちくりんなお子様の低身長、セーラー服の様な服と短パンと黒いタイツに、身長より長い丈のマント、後れ毛が左右に長い金糸の髪から少女の様な容姿をしている。しかし人間とは掛け離れた高貴な存在だ。……らしい。 「答えられる質問なら、ね」  ノエルと呼ばれた少し高い声の主は、眼鏡以外に中々これといった特徴の無い人間の男の子だ。あるとすれば、本をよく手にして人前にも拘らず、よく読んでいるくらいだろうか。  逢瀬とは、愛し合う二人でなのでそれとは違う。  二人は兎に角、周りに内緒で会っていた。──お互いに違う種族だからだ。 「──普通って、何だろうね」  少し低い声の主は疑問に思っていた。  普通とは、ノエルの様な男の子を指しているとしたら、尚更詳しいのではないかと安直に考え、疑問を彼に投げ掛ける。 「唐突に難しい質問出すなよ」 「そうなの? 人間だから答えられるものだと思ってたよ。あと本をよく読むじゃない?」  彼に疑問を投げ掛けた決定的な理由とは、後半のそれが主だとも。前半の理由はよく分からない。  しかしノエルは考え込みながら、少し低い声の主──カミサマに答える。 「普通……当たり前?」 「面白くない答えだなー」 「分からないものなんだよ、普通って……」  ふと側に咲いている花がノエルの目に入った。
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