半分な彼女

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「……心が読めるから、先輩に好かれたって思ったら教えるね。そうだな……さっき言ったみたいにだいたい半分くらい好かれたら、教えようかな」 「んー、わかった」  本当はよくわかっていなかったし、それに何の意味があるのだろうかと疑問に思う。証明になるわけでもない。彼女が人の心を読めても、僕には心を読むことができないから、それが正しいかどうか、どちらにせよ判断ができないのだ。  半分なのか、どうなのかはどうしたってわからないってこと。だが否定しなかったのは、彼女が言ったことは、基本的に全て受け入れたいという精神からだった。どこからその精神が涌いて出たかはわからないが。 「でもさ、気になる先輩の恋路の邪魔していいの?応援しなくていいの?」  おかしな構図に関して質問を投げかけた。恋路の応援ではなく、邪魔をする方向性になっているのが気になっていた。だって、好きな人の幸せを願うことは至極当然のことだと思うから。 「んー、残念ながら見込みは薄いからね。ゼロではないけど、これくらいなら邪魔してもたいした罪にはならないと思うんだよね。だから応援よりも、邪魔することの方が簡単そうだからそれで手を打つことにしたの」  やっぱり聞いてもよくわからなかった。 「難しい恋は忘れて、新たな恋もできるんですよ、っていう応援を込めて」  何だろう、けっこう自分勝手なやつだなと思ったが、どうしても否定しきれない。  だって僕は、彼女が大好きだから。    *  しばらくして、彼女と先輩が話している姿をときおり見かけるようになった。すごい、有言実行の行動力。そういうところは心から尊敬できるが、あまりいい気分ではなかった。  先輩はわりとかっこよくて背が高い。僕の方が顔はちょっと勝っている気がしたが、そんなもの人の好みによるし、身長は完敗だった。  ある日の帰り道、いつものように彼女と並んで駅へと向かう。何もなければ一緒に帰るのが日課だった。彼女が言うことが本当ならば、筒抜けの状態だらけな毎日。 「もう半分くらい好感度越えたかな。ちょっと越えすぎたかも」  彼女はやや細い眉を寄せて、ぺろっと小さな舌を出した。    半分がどれくらいかは未だにわからなかったが、確かにサッカー部の先輩の好感度は上がっていると思う。 「どう?信じてくれた?」 「いや、信じるというか、この場合ちょっと違うような……」 「何が?」  彼女は不満そうに僕を見上げる。 「心が読めなくても、誰でもわかるような気がする」 「そう?」 「積極的になってぐいぐい押しただけって感じじゃん」 「だから?」 「だから心が読めなくても、好かれてるんだろうなっていうのは本人でも、そうじゃなくてもわかるんじゃないかな」  彼女は少しの間、何か考えているようだった。 「……半分以上って?」 「それはわからないけど、客観的な意見を述べさせてもらうと半分以上に見えるよ」  半分って何だろう、自分で言いながら苦笑する。 「ふーん、そっか」 「そうだよ。そもそも、かわいい女の子にぐいぐいこられたら、どんな男でも好意をもつよ。多かれ少なかれね」  彼女は最初からその答えがわかっていたみたいに、くすくすと笑った。
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