Impossible n'est pas français.

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 半ば惚けたように溜息を吐くウィリアムに、ガブリエルは身を乗り出した。 「ウィルも、シルヴァンにああやって背中を預けてもらいたい?」 「そ、それは……! もちろんですよ!」 「あっはは。素直で良いね」  ガブリエルが”犬”と、そう評したように、ウィリアムに尻尾があったなら、それはもうブンブンと振り回している事だろう。  おかしそうに笑うガブリエルの視線は、当然のようにシルヴァンへと向けられた。 「ねえシルヴァン?」 「断る」 「俺はまだ何も言ってない」 「どうせ、ハーヴィーのようにしろとでも言うつもりなんだろう」 「残念。せっかくこんな場所なんだし、ウィルを甘やかしてあげればいいのに」 「言っておくが、お前の好奇心を満たしてやるつもりはない」  きっぱりと言い切るシルヴァンに、ガブリエルはつまらなそうにソファへと深く背を預けた。それまで顔に張り付いていた笑みが、きれいさっぱりと消え失せている。 「まったくもってつまらないな」  言いながら、酒の飲み干されたガブリエルのグラスに、ウィリアムはワインを差し出した。 「そういうところは、気が利くんだよね」  あたかも他は気が利かないとでも言いたげな態度のガブリエルではあるが、ウィリアムには反論のしようもなかった。 「あぅ……すみません」  謝罪を口にするウィリアムに構うことなく、ガブリエルは注がれたばかりのワインを飲み干す。再び空になったグラスを、ウィリアムは取り上げた。ワインを注ぎながらちらりとガブリエルを窺う。 「あの、ガブリエルはパートナーを作ったりしないんですか?」 「別に、今は興味がないかな。デートをしたければ相手に不自由はしてないし、特定の相手を作る方が面倒だよね」 「なるほど……」  まさか素直に答えてもらえるとは思ってもみなかったウィリアムだったが、答えてくれるというのであれば、気になっている事を聞いてみようという気にもなる。 「ちなみにガブリエルの好みは、どんな人ですか?」 「そうだなぁ。気が強くて、けど甘えたがりな子かな」 「気が強くて甘えたがり……」  独り言のように復唱するウィリアムへと、ガブリエルは身を乗り出した。 「ぅわあっ、ガブリエル!?」  すぐ間近に顔を覗き込まれ、慌てふためいたウィリアムが仰け反る。 「イヴとか、可愛いよね」 「確かに気が強くて……って、えぇええ!? イヴォンは駄目ですよっ!」  イヴォンに手を出そうものなら、ヴァレリーが黙ってはいないだろう。せっかく組織間の関係が上手くいっているというのに、戦争が起きかねない。 「まあ、それは冗談として。僕の好みを知って、君はどうするつもりなのかな? 気に入るような子を紹介してくれるとでも?」 「ぃゃ、あの……っ、そういう訳じゃ……っ。ガブリエルに釣り合うような相手なんて、俺の知り合いにはいませんよっ」 「ふぅん。なら、ただの興味本位で僕にこんな事を答えさせたって言うんだね?」 「え? あ、……はい。すみません……」  しゅんと項垂れるウィリアムに飽きたのか、ガブリエルは再びソファへと沈んだ。 「ウィルを揶揄うのもその辺にしておけ。黙っていれば際限もない」 「ようやくご主人様の登場という訳かい? そんなに可愛いペットなら、もっと早く助けてあげればいいのに」
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