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「僕を抱えて戻れるものなら、ね」
「良い根性してんな」
呆れたように言いながら、フレデリックを抱えたまま辰巳は立ち上がると、無言で部屋を横切った。その行先は、もちろんベッドルームである。
大きなベッドの上へと放り投げられたフレデリックが、求めるように両腕を伸ばす。甘えるにしては大きすぎる体躯に苦笑を漏らし、辰巳は寝台を軋ませてフレデリックへと圧し掛かった。言葉もなく口付けを交わし、互いの服を剥ぎ取っていく。
あっという間に生まれたままの姿になった辰巳とフレデリックは、確かめるように肌を寄せた。
「キミが居なくて、寂しかった」
「そうかよ」
素っ気ない辰巳の返事でさえも、フレデリックにとっては久し振りの事で。手を伸ばせば届く場所に辰巳の存在があるという事が、何よりも嬉しかった。
「こうして会えない日が増えると、なんだか昔を思い出してしまうね」
「また無理やり犯されてぇのか?」
「嫌だ。僕は優しく抱かれたい」
「はッ、素直なこった」
褒めるように金色の髪を撫で梳いて、辰巳はフレデリックへと再び口付けた。いくら吐息を貪り合ったところで満足など程遠い。
確かめるようにフレデリックの頬を撫で、首筋を滑り落ちた武骨な指先は、胸元に色づく小さな突起をさらりと掠めた。
「っん、……もっと、して……?」
求める声に誘われるがまま、辰巳はフレデリックの胸元へと唇を寄せた。突起を舐り、軽く唇で挟めば艶やかな声が頭上に響く。
「ぁっ、……ん、気持ち、ぃ……辰巳」
「馬鹿、煽んじゃねぇよ」
「ぃ……から、早くキミを感じさせて…っ」
「ったく、しようもねぇな」
せっかく優しくしてやろうと思えば、いつでも煽り倒してくるのだから質が悪い。とはいえど、ほぐしもせずにどうこう出来るはずもなく、辰巳はフレデリックの下肢へと手を伸ばした。
既に硬さを増した屹立を握り込み、ゆるりと擦りあげる。
「あッ、ん……、それ、……良いっ」
「だったら吐き出せ。一緒に突っ込んでやるよ」
引き寄せらるまでもなく、フレデリックの首筋に顔を寄せて辰巳は囁いた。唇に触れる肌が、どこもかしこも熱い。
まるで熱に浮かされるように喘ぎ続けるフレデリックの嬌声が、辰巳の欲を刺激する。すぐにでも狭い肉壺の中にねじ込みたい欲望を辰巳に堪えさせているのは、他でもなく『優しく抱かれたい』と言ったフレデリックの言葉だった。
――ったく、質が悪いったらありゃしねえ。
辰巳を止めるのも、煽るのもフレデリックだ。
やがて張り詰めるほどに反り勃った屹立から熱い欲を掌に感じ、辰巳はフレデリックへと口付けを落とした。
「良い子だ。望み通りお前の中にくれてやるよ」
投げ出されたままの長い脚を膝で割り開き、濡れた手がフレデリックの双丘へと伸びる。慎ましやかに閉じた蕾はだが、指先の熱に溶けるように綻んだ。
「期待しすぎじゃねぇのか?」
僅かな抵抗をみせながらも、卑猥な音を響かせて指先を飲み込む蕾を辰巳はぐるりと掻きまわした。男を受け入れることに慣れた躰は、あっという間に指よりも太いものを求め始める。
「っぁ、もっと、奥……」
すすり泣くようなフレデリックの声が耳朶を濡らす。辰巳の自制心など、どれだけ掻き集めたところで他愛もないものだった。
「おら、挿れてやっから脚上げろ」
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