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些か乱暴な手つきで僅かに浮いた膝を持ち上げる。憎らしいほど無駄のない躰を見下ろしながら、辰巳は狭い肉壺の中へと自身の屹立をねじ込んだ。
「んん……ッ、ァッ、……ッく」
「っ、……相変わらず狭ぇな…」
「んっ、辰巳……、キス、……して」
口付けを求めるフレデリックへと辰巳は躰を倒した。脚を抱えられたまま、圧迫感が急激に増したのだろう。フレデリックの口から苦し気な声が漏れる。
「あッ、……んぅッ」
「何だよ、要らねぇのか?」
「っ……ぃゃ、意地悪…しないで」
弱々しい言葉とは裏腹に、強く二の腕を掴む大きな手がどこか面白く、辰巳は小さく吹き出した。
「させる気もねぇくせによく言うよ」
苦しそうに戦慄く唇を吐息ごと貪れば、腕の中で大きな躰がビクリと跳ねる。
「はッ……ンッ、気持ち良い……辰巳ッ」
「ッ、……それ以上絞めんなッ」
「出してっ、僕の中に……全部っ」
整えられた爪が皮膚を食い破る。僅かに走る痛みと屹立を締め付けるキツさに、辰巳は顔を顰めた。
「お、前……、マジで、ッく」
我慢もさせてくれない嫁の中へと欲望を吐き出して、辰巳はぐったりと項垂れた。
「辰巳……?」
「てめぇ、ちっとは加減しろよ……」
些か情けない旦那様の声に、フレデリックは嬉しいような、申し訳ないような気持を味わった。それでも離れる気配のない熱が愛されているのだと実感させる。
「ごめん。でも、大好きだよ辰巳」
「俺もだよ阿呆」
ごつりと合わせられた額が熱い。すぐ間近にある黒い闇色の瞳が、優しくフレデリックを映していた。
◇ ◇ ◇
用意された広い部屋を見回して、それからマイケルは大きな窓に歩み寄った。
「良い部屋だな」
「ああ」
大きな窓から見下ろす港は活気があり、忙しなく行きかう人々と、対照的にゆったりと歩く観光客の姿を眺めることが出来た。コルス島を訪れたのは二度目になるマイケルだが、前回は来てすぐに引き返すという、滞在とは到底呼べない程度である。
「それよりも、抜け出してしまって本当に良かったのか?」
「構わん。どうせ好き勝手したいようにするさ」
「そうか……」
確かに言われてみれば、フレデリックもいつの間にか辰巳とともに姿を消していた。いったいいつ居なくなったのかは知らないが、自分たちが抜け出しても問題はないのかと納得するマイケルである。それに、マイケルがクリストファーと会うのも久し振りの事だ。
「やっと、クリスとふたりきりになれた」
窓に向いたソファに腰を下ろし、マイケルはクリストファーを手招いた。隣へと腰を下ろすクリストファーの肩を、軽く引き寄せる。
「今日はやけに積極的だな。そんなに溜まってたのか?」
「っ、どうしてそうお前は下品な言い方しか出来ないんだ!」
「それは、お前に欲情してるからだろ」
「なっ」
「久し振りに会えた恋人を前にして、手も出さない男が居ると思うか?」
頬をつぃと辿る指先に、マイケルは一気に顔が熱くなるのを感じた。恥ずかしい。けれども浮かれるほどに嬉しくもある。
「なあミシェル、お前はどうなんだ? 俺の内臓にペニスを突っ込んで、気持ち良くなりたいと思……」
「ッ――……! 馬鹿っ!」
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