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「へえ? 俺、年上は好みだけど男は初めてなんだよね。ロランが教えてくれる?」
ちらりと下肢に目を遣れば、ロランはゆっくりと頭を下げた。存在を主張するガブリエルの屹立を、大きく開いた唇で横から咥えこむ。
素直過ぎるその行動に、ガブリエルの口からは不満が零れ落ちた。
「少しは躊躇えよ」
「生娘のような相手がお好みでしたら、私に興味など持たないでしょう?」
「それはそれ」
「我儘ですね」
呆れたように言いながらも、硬く反り勃った屹立へと舌を這わせる姿が艶めかしい。
――口の中、熱い。
時折り聞こえる鼻から抜けるような吐息がガブリエルの耳朶を刺激する。口をめいっぱい開けて肉塊を頬張るさまに、不思議と嗜虐心を煽られる。
下肢に埋まる灰色の髪を、ガブリエルは指先で弄んだ。
「さすがに、同じ男なだけはあるよね。正直……長くはもたなそう」
若さもあるのだろう。きゅっと髪を強く掴んだかと思えば、ガブリエルの雄芯がどくりと脈打った。
「ッ、――……やっば…」
相当な量を吐き出したにもかかわらず、残滓までをも吸い上げるロランに笑いさえ込み上げる。
咥える時と同じように、ゆっくりと上がるロランの顔から目が離せなかった。
「美味しかった?」
「照れ隠しのつもりですか?」
「ははっ、やっぱあんたには敵わないかも」
濡れて色づいた唇を、拭うように指先で辿る。吐き出したものを躊躇いもなく飲み干されるとは思わなかった。
「ねえ、キスしたいんだけど」
「若いですね」
すべてを言わずともロランは察したようだった。ベッドサイドの小さな冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取りあげ、煽る。
「これでよろしいですか?」
「いちいち聞くなよ」
「それは失礼しました。あなたほど若い方を相手にするのは、初めてなもので」
ロランの言葉を遮るように、ガブリエルは唇を奪った。
――苦……。
けれども、嫌な感じはしなかった。
離れた唇を透明な糸が結ぶ。相変わらず表情ひとつ変わらないロランの姿に、何故か悔しさが込み上げる。
「……ヴァレリーが可愛げないって言ってたの、なんか俺わかるかもしれない」
「お嫌いですか?」
「嫌いって言ったら?」
どうするのだと、そう視線で問いかける。
「そうですねぇ。どうすれば可愛いと思っていただけるのか、ひとつひとつ伺いましょうか?」
「嫌がらせじゃん」
「それは困りましたね……」
ほんの僅か、下方へと逸らされた視線にガブリエルは息を呑んだ。ほとんど変化のない表情の中で、ふと見せる仕草に欲情を掻き立てられる。
――悪くない。
未だ服地を纏ったままのロランへと、ガブリエルはその手を伸ばした。
薄く筋肉を纏った肢体は、年齢の割に衰えてはいなかった。否、スーツの上からでは、この男に筋肉があるという事も想像できなかった。
「良い躰してるじゃん」
「……嫌味、ですか?」
「残念だけど本音だよ」
お互い布地を纏わぬ姿で向かい合うのは、当然ながら初めての事である。隣に横たわるロランは相変わらず表情が読めない。ゆるりと確かめるように肌を辿れば、ロランは僅かに視線を逸らせた。
――これは反則だよね。
過度に恥じらうわけではない。けれども、そこはかとなく醸し出される恥じらいが余計に艶めかしさを増幅させる。まさかここまであてられるとは、ガブリエルは思いもしなかった。
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