銀色の雪

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 強烈な吹雪が舞う雪道を、わたしはひとり歩いていた。吹雪で視界が全く利かない。もうどちらに進んでいるのかもわからなくなっていた。これがホワイトアウトというものなのだろう。おじいちゃんに雪山の天気は変わりやすいと言われていたのを今更ながら思い出す。後悔してももう遅い。  この山を登るのは、去年亡くなったひいおじいちゃんの悲願だった。わたしはおじいちゃんの代わりにこの山を制覇するために、トレーニングを積んできた。しかし、自然というものは時に非常な面を見せる。これまでのわたしの努力をあざ笑うかのように、過酷な試練を与えてくるのだ。  段々と足が重くなり、体の感覚がなくなっていく。このまま眠ってしまったら楽だろうけれど、きっとこの世界には二度と戻ってこれなくなるのだろう。  歯を食いしばって前を目指すが、吹雪は容赦なくわたしの体力を奪っていく。わたしは足をとられたことにも気づかず、雪の中に倒れこんでいた。少しずつ意識が薄れていく。不思議なくらいに心地よく、脳裏に過去の記憶がよみがえってくる。これが走馬灯というやつなのだろうか。
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