銀色の雪

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「君に一つだけ贈り物をしよう。僕らが見える君になら、何かしてあげられるかもしれない」  彼は屈託のない笑顔でそう言った。急に贈り物をすると言われても、思い浮かばない。つい一週間前のクリスマスにプレゼントをもらったばかり。今日だって、両親が何か用意しているだろう。そもそも、人ではない彼に何をお願いすればいいのかわからない。 「何かないのかい? この世界にはたくさんの精霊が住んでいてね。大抵の事は叶えてあげられると思うよ」 「精霊?」 「そう。森羅万象に宿る神様の化身さ。僕は、気霜の精霊、シモツチだよ」 「シモッチ?」 「違う違う、シモツチだ」 「キジモってなあに?」 「息を吐いてごらん」  わたしは言われるままに息を吐いた。空気に触れて白くなった息が、霧の様になって消えていく。 「今見えたのが気霜。こういう寒い季節こそ、僕の出番なのさ」  わたしは何度も息を吐いた。今日はかなり寒いので、真っ白い雲が出来上がって、ゆっくりと消えていく。
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