6人が本棚に入れています
本棚に追加
「お初にお目にかかります。ワイは門松の精霊、カドマヅチや」
「わたしはしめ縄の精霊、シメナヅチ。よろしくお願い申し上げる」
「僕は鏡餅の精霊、カガミベノチ。この中では一番の年下なんだよ」
わたしが首を傾げていると、不思議な姿をした三体の精霊たちが不安げに顔を見合わせ始める。
「彼らは正月に大活躍する三兄弟だよ。美冬も見たことがあるだろう?」
当時のわたしは都会のマンション暮らし。実家に帰ればあったのだろうが、ちゃんと認識するには少し幼過ぎた。
「ひょっとして、最近の子供は知らへんのやないか」
「確かに、薄々感じてはいた。時代遅れなのではないかと」
「まあ、気を落とさないで先輩。さすがに僕のことは知っているだろうから。……ね?」
オレンジを頭に乗せた平べったい顔のカガミベノチは、わたしの顔を覗き込む。
「うーん、鍋の蓋?」
「なっ……」
カガミベノチは驚いた顔をして押し黙ってしまう。見ていた他の二人がなだめるように彼の肩に手を置く。
最初のコメントを投稿しよう!