銀色の雪

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「さて、美冬。何か願いはないのかな? ここにいる連中が全力でかなえて見せよう」  シモッチが無数の精霊たちを代表して聞いてきた。彼らが神様の化身なのなら、お願いしたいことがある。 「じゃあ、ひとつだけ。ひいおじいちゃんの病気を治して欲しいの」  わたしが言うと、シモッチは窓をすり抜けて家の中に入り、すぐに戻ってきた。 「君のひいおじいさんというのは、一番奥の部屋で寝ている人かな」 「そうだよ」  シモッチは少し寂しそうな顔になって、首を横に振った。 「残念だが、その願いはかなえられない」 「どうして? なんでもかなえられるって言ったじゃない」 「おじいさんは病気じゃないからさ。生まれ持った寿命が尽きようとしているんだ」  ひいおじいちゃんはこの時既に九十歳。若い頃から登山で体を鍛え、ずっと健康そのものだった。この年の暮れ、急に体の調子を崩し、生まれて初めて入院することになったが、ほどなくして家に帰ってきた。幼かったわたしは、大した病気ではないのだと思っていた。よく考えれば、余生を家で過ごすことを選択したのだ。最後に白霊山に登りたい。うわごとのようにつぶやいていた。  わたしは優しいおじいちゃんが大好きで、山での冒険話を聞くのが何より楽しみだった。
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