ダーイ

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ダーイ

 恐る恐る目を閉じたまま、手でゆっくりと顔に触れると、何やら顔の至る所にネットリとした感触があった。そして、顔がめちゃめちゃ痛い! 何が起こったのか、未だに理解できずにいた。 (あの時……、引き金を引かれた……。なのに……、どうして顔中がねっとりしていてそしてなぜ痛い……!?)  ゆっくりとネットリしたものが目に入らぬようにしながら、目をあけた。すると赤いペースト状の物が顔にベットリとついていた。さっきから鼻につくツーンとした刺激臭が辺りを漂う。一口舐めてみると……。 (辛っ!!)  ペースト状にした大量の唐辛子である。 (なぜ、こんなものが……?)  疑問に思って周りを見渡すとすっかり太陽も昇り、外は随分と明るくなっていた。体育館のフロア内も太陽光が窓から入ってきており、はっきりと辺りを見渡せる。 引き金を引いた人物へと視点を移すと、今となっては、その全貌が鮮明に窺える。ライフル銃に見えたのは、ペースト唐辛子を満載に装填されたウォーターガン。よくプレゼンで使うポインターをガムテープで無理矢理括りつけられた物でこちらを狙っている。再び引き金は引かれ、ペースト唐辛子水鉄砲を撃ってきた。 「ぴゅーっ。びちゃびちゃびちゃびちゃ……」 「止めろっ! 止めろっ! 止めろーっ!」  危機は去ったと確信した今、狙撃手に対する恐れは一切なくなった。大量の唐辛子弾を浴びながらも、はっきりと止めるよう叫び散らす。反射的に発したその言葉に狙撃手は驚き、一瞬怯んだ。そして、その背後にはすでに紺色の制服を着た人物2〜3人が居て、すかさず確保された。そのはずみで1冊の本が落下した。そこには、某有名RPGから考案された漫画「ダーイの大脱走」のとあるシーン、主人公が崖から落下するシーンが描かれていた。 「ダーイ!!」  狙撃手は連行されながら大声を発し、虚しく体育館中に響き渡った。
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