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ぼくの夢には、いつも彼らがいる。
冬になるとやってくる妖精みたいな、小さくて、ふわふわして、冷たいもの。
自分はその姿をしっかりと確認できないのだけれど、どうやらそれは自分と同じような、こどもたちなのだと聞く。
時には一瞬で消えてしまって、時には強く人間に立ち塞がる。
つよくてよわくて、それでもまだ立ち上がる存在。
かっこいいだろう、と、そんな話を、おじいちゃんから聞いたことがある。
「雪のこどもたちは、たまにしか見られないかわりに、ずっと強いんだ」
だからおまえは、彼らを怖がってはいけないよ、と暖炉の火に照らされたふわふわの白いおひげが、動いて話していた。
お母さんやお父さんも、あのまっしろな存在が雪のこどもと、知っているだろうか。
キラキラ輝く夜空に、ちらちら輝く存在。
しんしんと積もるだけでなくて、ピューピューと、ビュービューと降り注ぐ。
地面に届けば固くなり、舞い上がれば自由に張り付く。そんな風に飛び回る彼らがいるこの冬が、ぼくも好きだった。
ぼくの世界は、みんなが温めてくれた暖炉の横だけで。
彼らは自由に気ままに飛び回っている。
好きなように、気ままに。
でも、雪のこどもの姿は、まだ見たことがない。
おじいちゃんは見たことがあるらしい。
見れるのかなと窓越しにみている間に、自分の息で白く濁って、向こう側がみえなくなる。
そのたびタオルで窓を拭いているから、その場所だけはずっとぴかぴかだ。
いつか友達になれるといいなと思いながらずっと窓辺にいた。
けれど。
彼らは自分を通り過ぎていくばかりで、ぼくの方を見向きもしない。
だったら、お庭の広いところだ、と決めたのに。
それも今度は、うまくいかない。
朝になればキラキラと輝いて、夜になれば静かに、限られた光を閉じ込めてしまう白い床。
大事なキャンバス。
まっさらなままでいて欲しいのに、そこにはいつも先客がいてぼくが眠ってしまう前と後では形も光り方も変わってしまう。
ぼくが一番乗りを決めた、と思った日だって、木の上にいるはずの子リスが走り去っていって、とんとんとん、と、かわいらしい柄をつけて去っていった。
結果、一面の雪野原はなくなってしまった。
「……もう!」
人としては一番乗りだったかもしれないけれど、どうにもほかのいきものたちがぼくの前に足跡をつけていくのだ。
とっても寒い日の朝でも、ほんのり暖かい朝でもそれは変わらない。
ずーっと起きて、見張って、彼らをとがめようとしたこともあったけれど気がついたらもう朝になってしまっていた。
なんなら、窓際にいたはずなのに、きちんとベッドで目を覚ます。
もこもこの毛布をかぶって、暖炉の火もちゃんとつけたままにして。
そういう準備万端なときに決まって、ぼくは朝寝坊してしまうのだ。
それが寂しくて悔しくて、毎朝おじいちゃんに報告をする。
今日はリスが、きつねが、とりが、って。
おじいちゃんはにこにこぼくの話を聞いてくれるけど、早起きの秘訣は教えてくれない。もちろん、雪の子どもとの出会い方も。
でも、いつか。
そのキラキラの雪の上をぼくだけの足跡で走り続けたいと思って、今日もゆっくり目を閉じる。
――おやすみなさい。
――また明日、いい夢を。
誰かがどこかで、ぼくに声をかける。
ぼくはそれを、知らない。
気付いたときには、また一面の雪野原。
誰かの歩いた、ゆきの中。
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