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それは2月のある夜のことだった。
「カズキチの散歩行ってくる」
私は柴犬のカズキチを連れて家を出た。
朝から降っている雪は、くるぶしくらいまで積もっていて、
長靴で踏み固めながら歩く私に構わず、どんどん走るカズキチは嬉しそうだった。
家から駅までの道は、街灯も民家もまばらで少し怖いのだけど、なぜだろう。
辺り一面、雪に覆われているだけで、怖さから守られているようで、
なんだかホッとする。
風もなく雪は優しく、ゆっくりハラハラと舞い落ちていた。
私は散歩道の途中にある小さな公園に入って辺りを見回し、
周りに誰もいないのを確認すると、ポケットからスマホを取り出した。
「大丈夫。ちゃんと言える」
私はスマホの連絡先から、あけちゃんの番号を探して電話をかけた。
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