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トップセールス
社会人1年目の冬は異例の寒波が列島を襲い、だからというわけではないが、おそらく僕にとって一生忘れられない冬となった。
「おはようございます。なんか今日…皆ソワソワしてます?」
「おぅ松坂。そりゃお前、今日はトップセールス様のお出ましだからね」
「トップセールス?」
「年末に課長が言ってたでしょ。忘れた?」
隣の席に座る先輩社員が皺の入ったプリントを差し出す。そこに書かれていたのは本社からのとある通達だ。
「我が支社の営業成績は全国最下位。それを何とかテコ入れしようってんで、会社で1番数字上げてる社員がわざわざ指導に来てくれるんだと」
「ありましたね、そんな話。…この林さんっていう方がトップセールスなんですね。どんな人だろ」
「さぁ?というかもうあと数分で9時になるのに、まだソイツ来てないよな?こういうのって普通、1番に出社してこれからお世話になる支社の人間に挨拶して回るものじゃないんけ?」
先輩が両手を頭の後ろで組みながら愚痴をこぼす。最近分かってきたことだが、この人はこういうちょっとした変化が嫌いだ。おそらく「本社の人間が来る」というイレギュラーでいつも通りの1日が乱されることがストレスになのだろう。日替わり定食とかも絶対食べないタイプだ。知らんけど。
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