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【番外編】シュールたんとおきつねちゃん
――――シュールたん。
あぁ、シュールたん。
「……」
じとー……。
あぁんっ!シュールたんがじっと見つめてるううぅっ!その見つめる先が俺じゃないのマジ嫉妬おしっぽぼふりぼふり~~っ!しかし大人げないとランランに睨まれたので……。
「シュールたんっ!何見てんの?」
それは神殿の会報誌のようだが……そんなめぼしい記事とかあったっけ……?
神殿の会報誌は神殿の行事やら、神殿周辺の季節のおすすめスイーツ、グルメ、コラム……それからラブラブな俺たちの取材なんてのも載っている。
シュールたんは神殿での生活のことを実家にも伝えたいと、毎号必ず手紙やお土産とともに実家に送っているのだ。あぁ……ほんと何から何まで尊すぎる……シュールたんっ!
しかしそんな会報誌で……何を見てるんだ……?
「雪月さま。こちらを」
シュールたんが見せてくれたのはとあるページ。そしてこれは……っ!
「近所の狐狸動物園の記事……!」
そういや周辺の観光系の記事もあったなぁ。
狐狸と言うとこちらでは狸ではなく狐のことだが、この動物園には、狐と貉がどちらもいる。ちゃんと予防接種をしているこの動物園のコたちは安全でひとなつこいので、実際に触って触れ合えるのが特徴だ。
※野生の狐や狸に触れたり、エサをあげたりするのは絶対にやめましょう
「このおきつねちゃん。とってももふもふで、かわいいのです」
はぅあぁぁっ!シュールたんは……シュールたんは……!特集されてる狐狸動物園の梅梅ちゃんに釘付けだったのだ……!確かにそのもふ毛並みは……最高だぜ!ちょっとばかし焼きもち妬いちゃう俺のおしっぽだが……このコ……女の子だな。女の子なら……可である……!
「今度の休みに会いに行こっか、シュールたん」
「……!はい、雪月さま……!」
ポッと頬を赤らめるシュールたんさいっこおおおおぉっ!!
※※※
そんなこんなで次のお休みの日。
神子夫夫が訪問すると言うことで、記者に向けてポーズ決めたり、園長に挨拶したり、一般のみなさんに迷惑がかからないように配慮してもらいつつ……おきつねちゃんとの触れ合いフィールドにやってきたのである。
「梅梅ちゃん」
シュールたんは雑誌に取り上げられていた梅梅ちゃんと触れ合い中。
梅梅ちゃんの毛並みをもふふわしながら幸せそうなシュールたん。梅梅ちゃんもシュールたんにもふふわしてもらいながら幸せそうだ。
「……うぐ……っ、俺だってシュールたんに撫でられたいけど、こぎつねたちの手前、できるかぁいっ!」
うん、近くに一般の方もいるが、同時にこぎつねたちもいるので、大人の狐獣人としてカッコ悪いとこ見せられるかぁいっ!
「はぁ……でもシュールたん尊い……かわいすぎゆばたん」
「はん……っ。そうじゃなきゃわいらのシュールたんは嫁にやれんわな」
え……誰……!?
振り返ってみればそこにいたのは……。
「……チベスナ?」
チベスナ獣人ではなく、ほんものの……チベスナ……?
「せや。チベットスナギツネさんや」
「そのどこのお国か分からないしゃべり方はともかく……誰……?獣人のいる世界だからって、さすがにモノホンのチベットスナギツネはしゃべれないだろ」
「わいは確かにチベスナや。けどただのチベスナじゃあらへんで」
「と、言うと……?」
「チベスナ高原の守り神的な存在のチベスナさんや」
は……はぁ……。うん。俺は神子とは言え、この世界にはいろいろな神がいる。神子だもの、この世界の神さまのことは学ぶからね。主神さまを中心に、主神さまの神トモが来ればおもてなしもするもの。しかし……チベスナの守り神は初めて会ったな。
「普段はチベスナ高原に籠っとる」
「それで今まで会ったことがないんだ」
そして知らなかったんだけど。
「でもな、うちのシュールたんが神子に嫁いだかんな」
「うん。シュールたんは俺の嫁」
「わいも様子を見にたまに来てんねん。狐を隠すなら狐の中やん」
確かに言わんとしてることは分かるが……チベスナは確実に……目立つ!!
「あ、チベスナ神また来てくれたの?これお菓子ね」
飼育員さんがおやつを持ってきてくれたのを、チベスナ神はもぐもぐ食べている。どうやら飼育員さんにもその存在は知られているみたい。
てか……チベスナ神!確実におやつ目当てに来てない!?そうじゃない!?
「ま、幸せにしたり」
「それはもちろん」
「雪月さま」
その時、シュールたんに呼ばれて振り返る。
「チベスナももふりたいのです」
な……なん、だと……っ!?まぁ……神さまだから、チベスナ神がいいなら触っていいと思うけど。
「チベスナ神、お前……オス?」
「わいがチャンねえに見えるんかいな。因みに攻めや」
「攻めオスは不可!」
「そうなの……ですか」
あうあぁぁっ!シュールたんがしゅーんとしてしまった!
「あ、女の子ならいますよ。ほら」
飼育員さんが連れてきたのは……女の子のチベスナ……だと!?
「わいの嫁はんや。受けダンシやで」
まさかのチベスナ神の嫁さんかよおおおぉっ!夫夫で通ってたわぁっ!しかし、受けダンシ同士ならば……特別だ!
「え?夫婦かと思ったら夫夫だったの?」
飼育員さんも気付いてなかったぁーっ!
まぁ、普通動物の番は夫婦か。チベスナ神は神だこら夫夫もアリなだけで。
しかし……。
「もふふわです」
梅梅ちゃんとチベスナちゃんをもふふわしながら、シュールたんはご満悦である。俺もシュールたんにくっついてその様子を和やかに見守ったのであった。
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