13.

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 お互いの想いをぶつけ合ったこの日から、二人は夜を共にするようになった。体を重ねることもあれば、手を繋ぎ、キスを交わすだけのゆっくりした時間を過ごすときもある。こんな夜が過ごせるのもあと少し。コオの滞在期間は着々と終わりに近づいていた。コオはワスカが湯に入っている間にベッドに寝転び、ぼんやりと天井を見上げていた。  (この部屋も見納めかあ)  三日後にコオは帰らなくてはいけない。そのことはワスカも知っているから、いまこうして一緒の部屋で過ごすようにしている。コオが帰ってしまったあと、彼は自分のことを忘れないだろうか、などと後ろ向きの考えが浮かんでは消える。  それに、街へ戻り一級薬草師の資格を取ったところで、それをどこで活かすべきなのか、自分はどういう道に進みたいのか、全く見当がつかないのだ。ため息をつくとうつ伏せになりワスカを待った。  翌日。コオは明日の滞在最終日まで密林に入って色々な薬草を探していた。滞在中、見つけたのは希少性の高いものから普段使われているものまで。ココリス村は薬草の宝庫だった。 「研究者がこの村に来る理由が分かるな」  汗を拭きながら手にした薬草を見つめる。それは独特の香りを放つシイ。皮膚の再生に役立ち、主に切り傷や火傷に効果がある。 「俺には薬草の見分けがつかない」  クスコスは知っていたワスカだが、さすがに二級薬草師の知識には到底及ばない。だが、コオがいろんな薬草を見つけては、その名前と効力を一つずつ教えていた。 「ああ、腹減ったな。昼飯はなんだろう」  一旦戻って昼食をとり午後からまた出かけるのがいつもの流れだ。宿に到着し、ドアを開けると目の前にはステラがいた。 「お、ちょうどよかった。ワスカ、コオ。悪いけど昼食は自分たちで温めてくれるか」  少し慌てているステラの様子に、コオは何かあったのだろうかと首を傾げた。 「何かあったんですか」 「うちのやつがな、怪我をしたらしいんだ。湯を少しかぶって火傷している」 「えっ」 「ひどくないらしいんだが、薬草師に処方してもらわないといけないから隣村まで行ってくる」 「ここに一級薬草師はいないの? ストックとかは」  とワスカはそう聞いたがステラは首を振った。 「実はこの村にはストックはない。村人は怪我や病気になると隣村まで行くしかないんだ」  それを聞いていたコオは手にあるシィをギュッと握る。火傷に効く薬草は手の中にあり、配合の知識もある。なのに自分は何も動けず、ステラは隣村まで行かなければならないなんて。これがもし、急を要する怪我や病気だったら……? コオの青ざめた顔を見てステラはその額を指で押した。 「お前が気にすることはないからな、すぐ戻る」  ステラはコオの気持ちを分かってくれたのだろう。少し口元を緩めると、帽子を被り宿を後にした。
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