12.

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しばらくして二人は湯で体を清めたのちにシーツを替えて一緒に寝床に入った。全身の気だるさでもう瞼が閉じてしまいそうだとコオがあくびをすると、ワスカは頭を撫でてきた。 「明日……どうする?」  あのあと二人は二回、体を重ねた。ワスカはまだ余裕がありそうだが、コオはもうヘトヘトだ。 「もう動けない。明日は休もう」  コオが呟くと、笑いながらワスカはコオの頭を何度も撫でている。まるで恋人のようなまったりとした甘い時間に、コオはだんだんと恥ずかしくなってきた。 (こういう状態になったけど、ワスカは俺のことを本当はどう思っているんだろう)  自分の想いはもう痛いほど分かっている。ワスカに惹かれているし体を重ねてさらにその想いは強くなった。コオのために叱ったり優しくしたり、ティカを召喚してくれたり。雇い主だから? それだけでワスカはティカに嫉妬などするわけない。コオは思い切って口を開く。 「ワスカは……俺のこと、どう思ってるの」  単刀直入な質問の回答はこれまた直球だった。 「好きに決まってるだろう。じゃなきゃ、こんなことしない。いつも明るくて、こんな俺にも笑顔を見せてくれて。まえも可愛いって言ってたよな? それに薬草に対する熱意は尊敬する」  ドクンとコオの胸が高鳴り、ワスカの笑顔が眩しくて思わず目を背けた。 「だけど自分でも気がついたのは最近だ。言いにくいんだけど、コオのためだけにティカを召喚したわけじゃないんだ」 「……?」 「俺も……体が疼いていたんだよ。初めてティカに触れられて、乱れてるコオの姿が、目に焼き付いていて。もう一度見たくて、召喚したんだ」  唖然とするコオ。そしてティカ目当てで禁足地に入った時、ワスカは軽蔑しないと言っていたことに気がついた。似たような思いをしていたからだろう。 「キスした時に、見るだけじゃなくて触れたい、コオの体を抱きしめたいって思うようになっていた」  ワスカの手がコオの頬を撫でる。 「今日はもう我慢できなくて……軽蔑されるべきは俺の方なんだ」  召喚士という立場を利用しティカを呼び出し、雇い主のコオを乱れさせた。そしてなによりコオをそんな目で見てしまったことにワスカは戸惑いながらも自分の欲望を止められなかったのだ。コオは思っても見なかったワスカの告白に戸惑っていたが、やがてワスカの手を取る。  禁足地に踏み入れたとき、ワスカに抱きしめられ胸が高鳴ったのも、キスを自分からしたときも惹かれていた。あの時は分からなかったけれど。 「……いいんだよ、今こうして想いが通じたんだ。俺はワスカが好き。お前は俺が好き。それでいい!」  うじうじと考えるのは、性に合わない。コオは大きな笑顔を見せて、ワスカの額にキスをする。一瞬キョトンとしたワスカはやがて微笑み、唇を重ねてきた。 「ありがとう、コオ」  見つめ合いながら、二人はキスを何度も重ね合う。  
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