消せない記憶

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消せない記憶

俺が10歳の頃、 両親が再婚して俺に6歳上の義兄が出来た。 義兄 夏生(なつき)と、はじめて顔を合わせた日。 「これから宜しくね、彰(あきら)くん」 緊張していた俺に優しく微笑んで挨拶をしてくれた。 第一印象の義兄の顔は、少し女顔で見惚れる程キレイでドキドキした。 少し垂れた二重瞼の下に、泣きホクロ。色白で華奢な体。 性格も穏やか。そして、何よりも優しい。宿題があれば、教えてくれて、TVゲームだって一緒に遊んでくれた。 それは義兄が、就職し1人暮らしをするまで続いた。 頭も良くて高校、大学、就職先だって一流の会社、エリート街道を歩んでいる。 両親にとっても、勿論、俺にとっても自慢の義兄だ。 中学の後半に僕の身長は、義兄よりも大きくなった。小柄な体格の義兄は、 「いつの間にこんなに大きくなったんだ?」 そう言いながら、俺を上目遣いで見上げてあどけなく笑う。 義兄は俺の理解者で頼れる存在。 俺はゲイだと打ち明けた時、 イヤな顔を1つせず、軽蔑もせず、両親にそのことを伝えることもせずに、逆に心配してくれた。 俺の味方だと言ってくれた。 大好きな家族で 大好きな義兄――――… その 義兄が明日 結婚する―――…。
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