消せない記憶

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俺には男の恋人がいる。 同じ年で幼馴染み。 告白は彼からだった―――…。 その恋人 桐斗(きりと)も就職し社会人1年目で、3ヶ月前に1人暮らしをはじめた。その時にアパートの合鍵を貰った。 嬉しかったのに、仕事が忙しくて、中々その鍵を使えなかった。 今日はたまたま仕事が早く終わり、そのまま桐斗のアパートに向かう。 明日は兄の結婚式だという事もあり、桐斗も出席するし、ゆっくりできるだろう。 結婚式用のスーツは、自宅に帰ってから着替えても十分間に合う。 その合鍵を使って彼の家にアポなしで入る。 だって合鍵をくれたのは、そういう事だろう? リビングに入り、微かに聞こえる甘い声に耳を疑う。 目の前の寝室のドアが少し開いていた。 嫌な予感とともに覗いてみる。 ドアの隙間から広がる光景に、血の気が引いた――――… 「…んっ…なつき好きだ…ッ」 「はぁ、…ああ、っ…もっと言って、ああっあっあっ、っ…んっ…ッ」 女より低い喘ぎ声 その声は義兄 夏生だった。 義兄 夏生の背中に覆い被さり、腰を振り続けるのは、俺の恋人 桐斗だった。 「なつきっ 好きだ…、なつきっ」 その言葉を義兄に言いながら快楽に顔を歪ませ、腰を夢中で振り続ける。 「ああっ、んんっ…俺も、好きだっ」 その言葉にハッとし、冷静になれた。 あんたは明日、上司の娘と結婚するくせに何を言ってるんだ? 2人で騙してたのか? 今、義兄を好きだと言っておきながら、俺に合鍵まで寄越したのはどういう意味だ?桐斗! 2人は夢中でお互いを貪り、俺の存在に全く気付いていない。 桐斗が腰を振り続けるたびに、ベッドのスプリングがギシギシと鳴り響く。 この部屋には、2人だけだと思い込んでいるのだろう。 忘れられない記憶を俺にくれた 義兄の夏生と恋人の桐斗。 なら俺も忘れられない 記憶をプレゼントしなければいけないな。 そうだろう―――?
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