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コンクールが終わって3日目の夜、オッサンの携帯が鳴った。そして「ボスが呼んどるからワシ帰るわ。メシ旨かった。おおきにな」といって、茶色の羽を羽ばたかせて雪の中へ消えていった。
あっけない別れだった。
今日も雪が降っている。
あちこちの庭先にサンシュユの薄黄色い花が咲き始めていた。
雪解けももうすぐだな。
雪の下では、フキノトウが出番を待っているのだろう。
体育館では、俺を苛めていた連中がお笑いコントの練習に励んでいる。
他にもお笑い道を目指すってグループができたりして、このところ学校はお笑いブームに沸いている。
おかげで全校的にイジメがなくなりつつあるとかで、学校もお笑いを推奨している。
体育館の使用を認めたりして、そのうち正規の部活になるんじゃね?
ま、結構なことだ。
俺へのイジメ?とっくに自然消滅したさ。
学校では俺に雪の妖精が現れたという噂が流れた。
俺は「そんなバカな話、あるわけないだろ」ととぼけることにしている。
でも、妖精伝説は本当だったのさ。
母ちゃんが作ったフキノトウ味噌を食わせてやりたかったな。
オッサンが消えていった空に向かって独り言ちた。
(完)
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