雪の妖精物語

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「兄ちゃん、兄ちゃん!」  誰かに肩を揺すられた。  俺は目をこすって目の前の奇妙なオッサンを見上げる。  小太りの冴えないオッサンだ。この町じゃ見かけたことがない。 「ほれ、早よ立ち上がれや」と馴れ馴れしく腕を引っ張る。  この大阪弁のオッサンは何者だ? 「オッサン、誰だよ。俺に何か用か?」と聞いてみた。 「用があるかって?なに言うとんねん。兄ちゃんがワシを呼んだんやないか」 「え?俺が呼んだ?」 「さっき呼んどったやないか。雪女でも妖精でもいいから助けてくれーって」  あっ、あれか!マジで来たのかよ。 「それじゃオッサン雪男か?」 「ちゃうちゃう」オッサンは腕をブンブンふって「ワシは雪の妖精や」とニマーと笑った。 「げっ!」  絶句してしまう。このオッサンのどの部分が妖精なのだ? 「う、嘘だろ」 「嘘やないで。正直言うてワシ雪男のほうが第一志望やってんけどな、適性がないたら言うて、妖精チームに回されてしもてん」  もしかして妖怪派遣会社みたいなものがあるのだろうか? 「妖精のほうは適性があったのか?」 「おお、バッチリやで!もしかしたら外見なんかも評価されたんかもしれんな」 「うーん…」  改めておっさんの姿をじっくりと観察する。  小太りで背丈もあって、全体にデカい。  坊主頭。ゲジゲジ眉。小さな眼がちょっと愛嬌があると言えなくもないが、どう頑張っても妖精ってイメージからは程遠い。
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