雪の妖精物語

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 オッサンは母ちゃんの作った生姜味噌のおでんが気に入ったみたいで、俺が口に入れる直前に奪ってはハフハフ言いながらたくさん食べた。  おでんの熱でオッサンの体が溶けないかと気になったが、溶けなかった。  母ちゃんには全部俺が平らげているように見えるらしい。 「今日はよぐ食べるねえ」と嬉しそうだ。 「おお、よぐ食ってるねー。食え食え!食ったら食っただげ力がづぐぞー!」  晩酌のアテにホッケの干物をつつきながら父ちゃんも嬉しそうだ。 「とうちゃん、ご機嫌だね」 「そりゃそうよ。親ってのはな、子どもが元気でいでくれたらそいだげで嬉しいもんよ」  そう言うと父ちゃんは「もう一本づげでぐれ」って母ちゃんに催促した。 「なんぼ子どもが元気んだども、飲み過ぎだら親のほうがぐだばっちまうよ」とか言いながらも、母ちゃんは台所に燗をつけにいった。 「いやさー、今日はコイツが珍しく酌してくれるもんだからよ、どうもいつもより酒が進むみだいなんだわ」  え?俺、お酌なんかしてないぜ?   見ると、隣に座ってるオッサンが父ちゃんにお酌しては、自分の(てか、俺の)湯のみにトクトクと酒ついでやがる! 父ちゃんはぜんぜん気がついてないようだ。  だいぶ酒がまわってきたころ、 「ひぇっ!」  父ちゃんは突然目を剥いてオッサンのほうを見た! 「だ、だだれじゃ!だれ、だれ~、アンタだ~れ~?」 「な、なに言ってんだよ、父ちゃん!」 「いや、そこ~、そこに~変なオッサンが~」  やばっ!もしかして酔っ払いには見えるのか? 「ほれ、父ちゃん飲み過ぎだわ~」 母ちゃんがやってきて、父ちゃんの腕をつかんだ。 「ほれほれ、もうお酒はそうだけでやめて。明日も仕事があるだがら、もう寝でおいで」  そう言って父ちゃんを引きずっていった。  俺もオッサンを引っ張って自分の部屋に戻った。
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