雪の妖精物語

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 俺の部屋にはモチロン布団は一組しかない。  オッサンは何の断りもなく俺の万年床にもぐり込んでしまった。  仕方がない。俺はオッサンの脇のスキマに寝るしかなさそうだ。  やれやれ、これからどうなっていくんだろう。  そういえば、頼まれたパンを買わずに帰っちまったんだ。怒ってるよなあ。明日が恐ろしいな。  オッサン、守ってくれるって言ってたけど、当てになるのかなあ。  ウダウダと考えていると、オッサンが言った。 「あのなあ、ワシはお前が助けてくれっちゅうから来たわけやけど、ホンマに助けてやらんならんのは、苛めてるやつらの方やねん。  同じ人間同士やのに、悪どいことして他の者を傷つけとったら、この先死ぬまで、いや死んでからも、今のお前の何倍も辛い目にあわんならんねん。  そういうことになっとるねん。  特にな、死んでから辛い目にあうのんは辛いで。  もう死にたい、死んだ方がマシやて思うても死ぬわけにもいかへんしなあ。  そやからな、今のうちに悪どいことせんように止めたらなあかんねん。  それがホンマの親切っちゅうもんや」  そう言ってアクビをひとつすると、グウグウいびきをかいて眠ってしまった。  布団のスキマからスースーと冷気が入ってくる。オッサンと密着するのは避けたいから、そっと掛け布団を引っ張った。  次の瞬間、オッサンはガバッと寝返りをうって、俺を抱き込むように抱えた!  うわっ!超密着!  モゴモゴと抵抗を試みたのだが・・・・・・オッサンは羽毛布団のように柔らかくて暖かかった。  そして俺はあっという間に心地よい眠りに落ちていったのだった。
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