雪の妖精物語

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 翌日、もちろん奴等は怒っていた。  教室に入るといきなり羽交い絞めにされ、リーダー格の奴が竹刀を振りおろしてきた。  うわーっ!目をつぶった。  が・・・ 「痛え~っ!」と叫んだのは奴のほうだった。  目を開けるとオッサンが俺の前にピッタリ貼りついていた。 「くそっ!何をしやがる!」  今度は回し蹴り、のつもりだったようだが、机の脚に引っかかって派手な音を立ててひっくり返った。  つぶれたカエルみたいな格好で。  それを見てクラス中は大笑い。 「お前笑いやがったな!」真赤になって怒っている。 「またネット掲示板にお前の汚いパンツ姿載せてやる!おい、誰かカメラ!」  オッサンはロッカーにもたれ、時々奴らに向けて指を振っている。 「持ってきたぞ」手下がスマホを渡そうとしてつんのめった。  とっさに奴のズボンにつかまったもんだから、ズボンがずり落ちてアニメ柄のタコパンツが丸見えだ。 「きゃー!」 「うぉーっ!」  教室中がどよめく。  隅っこでオッサンが指をクネッと曲げた。 「いや~ん、見ないでよぉ」奴がいつもより1オクターブも高い声で、パンツを押さえ体をクネクネよじっている。  教室中が爆笑の渦だ。  俺も思いっきり笑った。涙が出るほど笑った。 「もう一回!もう一回!」と手拍子が鳴り響く。  大喝采。  オッサンが両手を広げて全部の指をくねらせた。  すると手下どもがいっせいに尻を振り振りラインダンスを始めた。  誰かがスマホから音楽まで流し始めた。  爆笑と手拍子と口笛で窓ガラスも震えそう。  奴等、皆にはやされて嬉しそうじゃないか。  オッサンも「あいつ等お笑いの素質あるわ。ちょっと育てたろか」と笑っていた。
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