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「おい、後ろの目くそ鼻くそ。もう、どっちでもいい」
「そうよ。二人とも犯人でいいじゃない」
前の二人もいい加減、このやりとりが嫌になってきているようだ。
もう、やるしかない。最後の手段だ。
ぷぅぅ。
車内に間抜けな音が響いた。
「え?何、今の」
「またか?」
「今度のは誰だ?」
先ほどの強烈な悪臭による悪夢がよみがえる。
車内が騒然としてきたところで僕は攻勢に出る。
「おい沼田。今のはお前の屁だろ?そっちから聞こえたぞ」
「待て。俺じゃない」
「いい加減に認めろ。今の音がそっちから聞こえたのが証拠だ」
「そんな証拠じゃ認めらんねえぞ」
「車の中で二回も屁をこきやがって。みんなに謝れ!」
「いや、今のは違う。俺じゃない」
かかった!
僕は自信満々に言ってのける。
「え、なんて?今のは違うって言ったか?」
「ん?」
「阿久津も里奈さんも今の沼田の発言聞いたよね?」
「ああ」
「うん、聞いた」
二人とも頷いている。僕は意気揚々と追い打ちを掛けに行く。
「今のはっていうことは、さっきのはお前だな?」
「は?何のことだ?」
「そう、今の屁はお前じゃない。今の音の犯人は僕だ」
「おい、こいつ認めたぞ」
「ああ、今のは認める。だが、さっきのは僕じゃない。お前だな?」
やってやった!
沼田が犯人だったんだ。
安堵した僕と呆然としている沼田に向かい、呆れ果てた阿久津が吐き捨てる。
「お前ら、帰りは歩いて帰れ」
了
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