身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

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「ちょっと、あんた、何やってんのよ」 「いいえで答えれば良いんだろ?ちゃんと答えたぜ」 沼田は何とも思っていないようだ。 「ちゃんと最後まで質問を聞いてから答えなくちゃ、本当の事を言っているか、嘘を言っているか、わかんないじゃん」 「い、い、え」 沼田は気にせず答える。 「まだ、何も言ってないでしょ?もう頭に来た。いいよ。いいえだけで答えられるもんなら答えてみなよ」 里奈がキレる。沼田は人を怒らせる事にかけては誰にも負けないな。 「あんた、馬鹿じゃないでしょ?」 里奈が早口で質問する。途中で遮られないようにしているんだな。 「い、い、え」 沼田は、自分は馬鹿ですと言っているようなもんだけど気にしていないようだ。 里奈の質問は続く。 「あんた、自分の事、イケてると思ってないでしょ?」 「い、い、え」 「あんた、会社中の女子に嫌われている事知らないでしょ?」 「い、い、え」 「あんた、私の事、かわいいと思ってないでしょ?」 「い、い、え」 沼田は自分で何を言っているか解っているのだろうか。 それとも、そんな事は気にもしないで、いいえと答えることに意地になっているだけか。
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