身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

12/20
前へ
/20ページ
次へ
「…………」 里奈の質問が止まる。さすがに沼田には敵わないか。 「あれ?」 里奈が何か気付いたようだ。 「ちょっと、あんたの所のシート、タバコの火で焦げてない?」 「え?どこだよ?」 沼田が狭い後部座席の中で巨体を揺らし、シートの焦げ跡を探す。 「おい、沼田。シート焦がしたら修理代請求するからな」 阿久津もハンドルを握りしめ、前を向いたまま怒気を含んだ口調で言う。 「どこだよ?松本も探してくれよ」 沼田はかなり慌てている。その間も狭い後部座席の中で巨体は揺れ続ける。 「僕からの位置では解り辛いよ」 お前の巨体が邪魔だからな。とは言えなかったけど……。 「おい、高原!どこだよ。教えろよ!」 沼田も限界が近づいて来ているようだ。里奈にまでキレかかっている。 その里奈はというと……、
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加