身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

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「で、阿久津が始めた記憶力テストで、わかったことがある」 そう言うと沼田は得意げに続けた。 「阿久津と里奈は昨日の夕飯でパスタを食べたんだったな?」 「そうだけど。嘘はついてない」 「そうよ。間違いないよ」 阿久津も里奈も正直に答えているようだ。 「パスタ料理では香り付けのためにニンニクを使用する物が多い。日本ではオリーブオイルに香りが付いてもニンニクをそのまま残す店は多い。昨日の夕飯にニンニク入りのパスタを食べていたなら、強烈な臭いの屁が出ても不思議はない。よって、お前たちのどちらかが犯人だ」 自信満々の顔で、問い詰めるように二人を交互に睨んでいる。 「名推理を披露してもらった後で悪いが、俺が食べたのは和風たらこパスタだからニンニクは入っていない。ちなみに里奈の食べたカルボナーラにもニンニクは入っていない」 「そうよ、お出かけの前の日にニンニク入りの料理は頼まないわよ」 思わぬ反論に沼田がどんな顔をしているのか見てみると、一瞬固まったもののすぐに元の表情に戻り、 「二つ目は、高原の嘘を見破るというやつだ」 指を二本立てる沼田。
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