身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

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「おい、俺たちを疑った発言に対しての謝罪は?」 「こいつ、腹立つわ。いつも通りだけど」 悪びれる様子もなく、沼田は推理を続ける。 「あの嘘発見テストだが、やったのは俺と松本だけで阿久津と高原はやっていない。これは高原が犯人で俺たちに濡れ衣を着せようとしていたか、阿久津が犯人だと知っていて庇ったか、だ。よって、お前たちのどちらかが犯人だ」 ふー、と長い息を吐いた阿久津は前方の路上を見据えたまま、 「その嘘発見テストだが、俺は今までに何回も受けている。里奈は俺の癖を知っているし、俺も嘘を見破られないようにする対策は知っている。だから、今この場でやっても意味はない」 「当たり前だけど、私は自分の嘘は分かる」 二人とも隠せない程の苛立ちを含ませている。 「そういうことだから、犯人は松本、お前だ」 沼田は僕の事をキッと見据える。 「なんで、そうなるんだ!」 ふっふっふっと口の端を歪め、 「まあ、落ち着け。今から説明してやる」 こういう奴だよ、こいつは。 人の事をイラつかせる天才だな。
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