身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

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「一つ目。記憶力テストで分かった昨日の夕飯。お前は来々軒のラーメンにニンニクたっぷり入れて食べた」 「いや、昨日はいつもより控えめにしたんだけど……」 「二つ目。高原の嘘発見テストの時の態度が挙動不審過ぎる」 「いや、あれは急に人を殺したことがありますかとか言われたら動揺するよ」 「三つ目」 こいつ、人の話を聞いてない。 「さっき、サービスエリアによった時、トイレから長い時間出てこなかった」 「いや、あれは洗面台の水が出なかったんだよ。センサーで水が出るタイプの奴で、なかなか反応しなかったんだ。隣の洗面台を使ったら出たから良かったけど」 うん、うん、と目を瞑りながら頷き、余裕の態度を取っている沼田は急に僕を見据えて、 「認めちまえよ」 「いや、僕じゃないから」 すると、ハンドルを握る阿久津が言う。 「松本。こいつには論理的に決定的な反論を突きつけてやるしかないぞ。それが出来なければ、お前が犯人ということにされる」 そんなこと言われても……。 「確かに松本君は隠し事をしているという質問に対して、嘘を吐いていたね」 里奈まで、何を言い出すんだ。 「さあ、全部認めて楽になれ」 沼田の勝ち誇った顔が憎たらしい。 やばい。 このままでは犯人にされてしまう。 僕が犯人じゃないのは僕が一番知っているのに。 どうしよう、反論が見つからない。
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