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「ふーむ」
風神さんは一度原稿用紙から目を離したかと思うと、顎に手を当てて考え込んだ。
「どうでしょう?」
「ミステリあるあるの展開でつまらないな」
「そりゃあ、ノンフィクションなんですから」
「D坂だの江戸川喫茶だの、変な脚色を加えるくらいなら、まずこの退屈な構成を直してくれよ。だからいつまで経っても売れないんじゃないのかい?」
「そ、そんなこと言わないでくださいよ‥‥‥」
いきなり虚を突かれ、僕は言い返せる言葉がなくなった。
「それはすまない。ただ、これだとこの後の展開が見え見えだよ。どうせ駐輪場に行ったら目撃者がいて、ここは誰も通っていない、とか証言するんだろう? 見事な密室の完成だ」
「‥‥‥」
「うむ、図星だな」そう言ってサディスティックな笑みを見せてから、風神さんは再び原稿用紙に目を向けた。「じゃあ、読むとしよう」
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