桜の花の木の下で

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会社の同僚と桜の下の小川沿いのウッドデッキで花見をしていた。ふと顔を上げ道路のほうを見ると桜の枝の隙間から藍色の着物を着た綺麗な男が見え隠れしている。その美しさに目が離せない、つい跡をつけてしまった。後ろから「拓海(たくみ)どこに行くんだ?」と言う同僚の声で我に返り、後ろを振り返ったほんの少しのあいだにあの美しい男の姿が消えていた。 会社にいても、あの桜の中に埋れるあの美しい男の顔が頭の中に浮かんでくる。ああ、僕はどうなっちゃったんだ!僕は男好きではない。学生時代には彼女だっていた。今はまだいないけど、誘われれば合コンにだって積極的に行っている。なのにあの男のことが忘れられない。仕事をしていても上の空だ。またあの桜並木に行けば会えるだろうか。 拓海は会社の帰りについ桜並木に足が向いてしまう。桜並木は自分の家に帰るには遠まわりだけどあの美しい男に会えるのではないかと、ここのところ毎日桜並木を通って帰る。 あ!あの男がいた、何故かドキドキする。あの男にもっと近づきたい。今しかない、今度いつ会えるかわからない、思いきって声をかけよう。 「こんばんわ、桜が綺麗ですね!夜桜は格別ですね、いつもここにいらっしゃるんですか?」と拓海は男に声をかけた。
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