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 僕の家はまちはずれだったから、毎朝二百メートルほど離れた一年上の高槻華月(たかづきかづき)先輩の家に行き、そこからふたりで学校へ行った。保育園からずっと続く僕らふたりの関係。  三月の早生まれ。小柄で陰キャラでスポーツも出来ない僕なのに、特に学校でイヤな思いもせず済んだのは、成績優秀で生徒会長も務めた華月先輩のおかげだった。  毎年、必ず夏は来る。  夏が来ると、華月先輩の家は、垣根いっぱいの朝顔で覆われた。  毎朝、日が昇り始めると、空を仰いでゆっくりと花びらを開く朝顔。  先輩は、まるで朝顔のように、いつも前を向いて明るい笑顔をふりまいていた。  僕は先輩と一緒にいるのが大好きだった。  町へ遊びに行くときだって、必ずふたり一緒だった。川や田畑に囲まれた町へ向かう一本道。僕にとって、ひとりなんてことはあり得なかった。  華月先輩と僕がふたり、肩を並べて歩く道だった。  けれどもそれがかなわないこともあった。  先輩は病気がちで、入院することが時々あった。どんな病気だったのかは、よく分からない。辛い思い出でしかないから、今も知りたくない。  あれは中学一年の夏のことだった。
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