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「それが松山先生の県知事賞受賞作なんですね」 「『先輩の朝顔』か。高校一年で県知事賞。先生ってすごい」 「みんな松山先生に拍手」 「高校の美術教師じゃもったいない」 「それに先生の恋バナ、すっごくよかった」 「うん、いい話じゃ~」 「感動しました」  先輩との別れから長い歳月が経った。  高校で教鞭をとるようになり、今日は、美術部の生徒たちと県美術館に来て思ったこと。  最近の高校生は声が大きい。それに表現がストレートすぎる。僕の高校時代もそうだったのかなあ。いや、絶対に違うと思う。  美術部の女子生徒と県美術館に見学に来て、率直に僕の感じたこと。 「先生。重大発表があります。この絵を見ていたら、女の人の声が聞こえてきました。 『初恋はよい思い出として、早く結婚しなさい』  そう言ってました」 「あのね、君たち」  帰り道。女子生徒のひとりが僕に声をかけてきた。ほかの生徒たちといえば、帰り道を有意義に使うつもりだろう。グループに分かれてどこかへ行ってしまった。多分駅前通りだろう。
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