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トロン
「先輩~!おれ、お腹すきましたよ~。」
「なっさけないなあ…。俺が若いころはなあ…」
「うわ…先輩おっさんくさ…。」
「おっ…。いうようになったな…。」
うるさい。
私は、人間どもをにらみつけた。
ここは、どこだ。
ああ、アンドロイド研究所…
周りのチカチカと光る機材に目を細める。
私は捕まったのか。
「おや?アンドロイドのお目覚めっすよ~!」
「お、そうか。」
目の前の人間はどこかうれしそうな表情で私を見ている。
それがどうも私には気味が悪かった。
なぜ私をそんな目で見るのだ。
「君の…機種を教えてくれないか?」
「なぜ…。」
紡ぎだした限りなく人間に近い電子音はかすれていた。
「なぜ、人間に情報を渡さなければならないのですか。」
ぎっと、相手をにらみつけても、ひるむ様子はさらさらなかった。
その舐めた態度に腹が立つ。
「確かに。それもそうだな。」
納得したようにうなずいたのは赤髪の男だった。
「私たちから自己紹介をすべきだったな。
なあ、新入り。」
「確かに!それは礼儀っすよね~!」
へらへらっと笑う茶色の髪の男。
白衣の下にパーカーとはずいぶんと研究職をなめているのではないか。
「私は、ヘリオス・トリテレイア。
ぜひ、ヘリオスと呼んでくれ。
こいつは新入りだ。」
「新入り…?」
「アンドロイドちゃん、新入りで覚えちゃいますよ~。
まあ、いっか。
じゃあ、俺のことはシンって呼んでくださいっす。」
「いいのかよ。」
「あなたがたの名前を聞いても、私は決して情報を渡しません。」
「そうか…。
君の口から聞きたかったんだがな…。」
ヘリオスはにやっとした笑みを見せる。
そして、ゆっくりと私に触れようとしてくる。
そうだ、これこそが醜き人間だ。
私はヘリオスに戦闘態勢をとった。
腰を低くして、ふーっと息を吐く。
ピリピリと場を焦がす緊張感が走った。
「えいやっ!!!」
ヘリオスをにらみつけていると、シンが何かを投げる。
「あれは…?」
火薬の物質はなさそうだ。
どうしようかと戦略を考えているうちに、私の触覚が揺れる。
「…うっ。」
私の視界は突然真っ黒になった。
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