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「……。よし、効いたかな。」
俺は、生臭い手に顔をしかめる。
水族館の職員にでもなった気分だ。
当分落ちなさそうな匂いに気分が落ち込む。
「俺の美しいてのひらがあ~。」
あんなに強いアンドロイドの弱点が魚の生臭さだなんて…
「馬鹿言うな、新入り。
あのままだったら俺らは何の成果も得られないまま、殺されてたぞ?」
「それは…、そうっすけど…。」
ヘリオスさんはとても冷静にアンドロイドちゃんの首元を確認する。
「えーと、ウーラノス13ー4。NO69…だな。」
目を開いたまま崩れ落ちたアンドロイドちゃんは、まるで死体のようだった。
リアルすぎるアンドロイドが、一時期問題になっていたことをぼんやりと思い出す。
あの頃はまだ幼かった。
「この機種は、数年前のあの事件によって、闇に葬られた機体だ。」
「……あの、事件。」
ヘリオスさんは、俺の顔を見て神妙に頷く。
「ああ、そう……だ。」
ヘリオスさんの表情は悔しげに歪んでいた。
「俺らは、人間の幸せのためにアンドロイドを開発しているんだ。
なのに、あいつは……」
唇を噛み締めたヘリオスさんは、握りしめた拳を睨みつける。
「本当は、ウーラノスにも罪は無いんだ。
でも、あたる相手がいないから、人々はウーラノスを壊すんだろう。」
初め、この機体はもっと崩壊していた。
通りすがりの人々にやられたのだろう。
ここまで直し、意識を戻したのは誰でもないヘリオスさんだ。
「何度も……俺の手で壊しかけた。」
ヘリオスさんは、機体の髪をとる。
研究所には人工毛が無かったため、髪はうねってしまっている。
「こんな事件は二度と起こしては行けない……」
「それは、当たり前っすよ。」
俺は食い気味に答えた。
思っていることは、同じだ。
もう二度とあんなことはおこってはいけない。
俺は、クリオの首の後ろにあるスイッチを押す。
ウィンッと、起動音が響いた。
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