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「……ん。」
ぼやけた視界のピントが合うまで、
瞬きを2.5回要した。
どうもカメラの性能が
下がってしまったらしい。
「おはよう。」
私に声をかけたのは、ヘリオスだ。
「私の機体に何をしたのですか。」
「何もしていない。
それは君自身がいちばんよく分かっているんじゃないかい?」
「……それもそうですけど。」
全身のシステムは問題なく稼働していた。
じゃあ、何のために私に一時的なシステムエラーを起こした?
「ウーラノスなんだね、君は。」
なるほど、情報を盗まれたのか。
「だから?」
「だから?」
私の言葉を繰り返し、ヘリオスは怪訝な顔を見せた。
「情報を知って何になるのですか。」
ヘリオスはそっと、私に近づく。
「なっ……」
ヘリオスは、ひざまずき私の手を取った。
「大変……だったんだな。」
「…は?」
「お前はずっと、苦労してたんだろう。
そこで、俺たちはおまえに提案がある。」
ヘリオスの背後から足音が近づいてきた。
「ヘリオスさぁん。さっきからお前お前で、なんかやっすよ~。
先に名前を付けませんか~?」
「それも…そうだな。」
名前なんて必要ない。
そんなくだらないものに真剣に悩む研究員たちが私には信じられなかった。
「クリオ…とかどうっすか?」
「クリオ?」
「そうっす!クリオネみたいだから、クリオ!!」
「まあ、新入りにしてはいいんじゃないか?」
「してはが余計っすよ!」
シンがぷーっと、頬を膨らます。
クリオ…?
「なあ、クリオでいいか?」
「別になんだってかまいません。」
「冷たいっすねぇ~。かわいいじゃないっすか~!クリオちゃ~ん!」
「そろそろ、殴られるぞ。」
ヘリオスは私を違う部屋へと案内した。
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