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オオカミはふらふらの足で、子ヤギの家に向かいました。
「よう」
「きゃああああああああああああああ!?お、狼!!」
その家には、子ヤギのお父さんとお母さん、そして七匹の兄弟がいました。兄弟たちが怯える仲、末弟の彼だけは目をまんまるにしてこちらを見ていました。
オオカミは言います。
「明日の夜明けまでに、この森を出ろ。もうすぐ、この森に東の森の連中がわんさかと押し寄せるだろうさ。そしたら、お前たち草食動物はみんな食われちまうだろう。この森の北の山を越えることができれば、北に新しい森があるらしい。此処とは違って、草食動物も肉食動物も、ありとあらゆる動物がごったまぜに暮らしている森だ。危ないかもしれないが、うまくいけば生き延びられるだろうさ。さあ、さっさと準備するんだ」
オオカミの言葉を、家族はなかなか信じませんでした。しかし末弟の子ヤギが一緒になって説得してくれたことで、どうにか家族は頷き、荷物をまとめ始めたのです。
おなかがすいてふらふらのオオカミには、最後の仕事がありました。子ヤギ一家から貰った斧を使って、木を切り倒し、川に橋をかけたのです。
そして、子ヤギ家族が森から出ていったタイミングを見計らって遠吠えをしました。
「橋がかかったぞ!西の森と東の森が行き来できるようになったぞ!さあ、おなかがすいた奴らは橋を渡るがいい!」
東の森から、次々と狼たちが押し寄せてきました。運よく逆に東の森へと逃れた一部の草食動物たち以外は、次々と狼や虎たちに食べられていきます。
子ヤギたち家族をいじめていた動物たちも、学校のものたちも、どんどん食われていきました。そして、彼等の恨みと憎しみは、森の掟を破って橋をかけた元ナンバー2のオオカミに向かいます。
「お前のせいで!」
「私の可愛い子供達を返して!」
「この悪魔め!」
「人殺し!嫌われ者のオオカミめ!」
「殺してやる、お前なんか殺してやる!」
「死ね、死ね、死ねえええええええええええええええええええ!」
オオカミは、草食動物たちの銃で撃たれ、斧で切られ、ボロボロになって川へ落ちていきました。
今度はもう、とても助かることなどできないでしょう。それでも、オオカミは最期まで笑っていたといいます。
――ああ、友よ。生まれ変わったら、今度こそ。
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