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もしも狼が、子山羊と友達になったなら
昔々、そのまた昔のとある世界。
二つの隣りあわせの、大きな森がありました。
西の森と東の森です。
西の森には、ウサギやヤギ、猫といった比較的大人しい動物たちが暮らしていました。逆に東の森には、狼やトラやバッファローといったちょっと気性の荒い動物たちが暮らしていました。
二つの森は、大きな川で区切られていて、簡単に行き来することはできません。森の間に橋をかけようという話もありましたが、主に西の森の動物たちの反対でそれは叶いませんでした。
間の川の流れは速く、流されたら二度と戻ってこれないという話もあります。狂暴な動物たちも、川を無理に渡ろうとはしませんでした。
そんなある日、東の森でトラブルが発生します。東の森の草食動物の数が減ってきて、肉食動物たちが飢えるようになってきたのです。
そして、ついには同じ一族の間で争いごとが起きるようになりました。狼は狼でも、ひ弱な個体は餌を貰うことができなくなっていったのです。
強い者だけが生き残ればいい。弱い者を守る余裕なんかない。みんながみんな、おなかがすいて余裕がなくなっていきました。だから。
「おい、いくらなんでもそりゃねえだろ。そんなチビを見捨てるなんざ正気の沙汰じゃねえって!」
東の森で、ナンバー2だったオオカミもまた例外ではありませんでした。生まれたばかりの狼たちを見捨てようとするボスに、良心の呵責からつい意見を言ってしまったのです。
ボスは、ナンバー2のオオカミを可愛がっていましたし、彼の強さを認めていました。自分がボスを引退する時は彼に後釜をゆずってもいいと思っていたほどです。
しかし、自分に意見する者や、弱い者を庇う者をほっとくことはできません。自分の沽券に関わりますし、群れの秩序を乱してしまうことになります。
ゆえに、仕方なく仲間たちに命じました。
「そいつは儂に反抗した。追放せよ」
「イエス、サー、ボス!」
ナンバー2のオオカミには、言い訳の余地も与えられませんでした。
彼は仲間たちに追い立てられ、川へと突き落とされてしまったのです。
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