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「あの若造を我らで引きずりおろすんだ。そのためにも君には期待しているぞ」  脂ぎった赤ら顔に薄い髪、金縁眼鏡の奥から横柄な目つきでねめまわしてくるのは、校長の江沼 康治(えぬま こうじ)だ。  江沼は理事長の椿 霧矢を嫌っている。  なんとか理事長から引きずり下ろそうと画策しているが、自身がその器ではないので滑稽に見えた。  ただ、校長と言う立場の男は味方にして損はない。こちらの評価が高いのでれば、それを利用するのみ。  内心で江沼を馬鹿にしながらも、後ろ手を組んで江沼の前に立つ。  話聞いているようで、聞いていない。  自らの楽園を作る、という壮大な構想が完成しようとしている。  その妄想に愉悦を覚え、歓喜で身体に震えがくる。  もちろん表情はおくびにも出さない。  神妙な顔つきで、江沼(バカ)の話に頷くだけだ。 「そう言うわけで、宜しく頼むぞ」  何を宜しく頼まれたのか知りもしないが、力強く頷いてみせ、校長室を辞した。  あの江沼(バカ)のせいで、時間を無駄にした。  まぁ、いい。  獲物は捕らえてあるから、時間は無限だ。  どうやって可愛がってやろう。  そう思いながら生物棟へ向かう。  廊下を歩くとカツ、コツと革靴の音がした。  生物棟は生き物を飼育するための、飼育室がいくつかある。  飼育生物が逃げ出さないための頑丈なセキュリティが施されている。  生物室の一つの前に立つと指紋認証キーに指をあてる。  指紋を読み取ったセキュリティが解除され、扉の鍵が開錠した。  重厚なスチール扉を開ける。  コツコツと革靴の音を立てて入室すると、奥の部屋に入る。  二重にセキュリティがかかった部屋は、ワンルームマンションのようだった。  ベッド、バス、トイレが完備されている。  ただ、窓がない。  ベッドに一人の少女が眠っている。  愛らしい顔立ちの少女だ。  自分好みの少女を手元に置くことが楽園の第一歩だ。  今まで2回ほど薬品の調合を間違えた。  おかげで二人も失ってしまった。  今回こそは間違える訳にはいかない。  ベッドで眠っている少女の髪を優しく撫でた。  少女が身じろぎして、うっすらと目を開けた。
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